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舌側矯正ニューハーモニーのセミナーへの出席
講師:松野 功先生
奥田薫之先生
早朝の出発と会場への到着
東京で開催された舌側矯正のニューハーモニーの1デイセミナーに参加しました。
ハーモニーのセミナーに参加するのは約1年ぶりとなります。
車中の時間を利用して今回の講演で自分の課題としている部分の舌側矯正の問題の解決の糸口をみつけるために論文2本を準備して、それを読み、予備知識をつけて会場へ向かいました。
会場は銀座・日比谷に近いペニンシュラ東京というホテルで開催されました。
ペニンシュラホテルといえば漫画「ちびまる子ちゃん」の花輪君がまる子にあげたチョコレートが香港ペニンシュラ製のチョコレートであったことと改装する前の名古屋松坂屋北館にあったペニンシュラ製の杏仁豆腐、マンゴープリンが限りなく洋菓子に近いものであったことぐらいしか連想できない私でした。
ベルガールにセミナー会場の位置を尋ね、3階のグランドボールルームへ案内されました。
ボールルームというだけあって、セミナー会場というよりは著明な先生の出版記念講演のような雰囲気でした。
受講者は約60名ほど、全体的には若い歯科医師が多く、特に女性の若い歯科医が非常に多い印象でした。
セミナー午前の部
講師の先生は前回と同様で松野先生と奥田先生の2名で、午前の部ではニューハーモニーの改良点とブラケットの接着操作について講演がありました。
ニューハーモニーの改良された点
・完全なるCAD/CAM体制が整ったフルデジタルのニューハーモニーの紹介
・今回ニューハーモニーのカスタマイズブラケット、カスタマイズワイヤーの製作がフランスから完全にアソーインターナショナルに移り、フランスの工場からフィリピンのマニラのアソーの工場で行なわれることにより精度がさらに向上したこと
・外形の改善、セルフライゲーション、ニューハーモニーで使用するカスタムワイヤーのワイヤーシークエンス
などが説明されました。
松野先生は講演会場がかわっても昨年お目にかかったときと同様に気取ったところもなく、ざっくばらんに自分の診療室での患者様への対応なども交えながら詳しく解説していただきました。
ブラケットの接着について
奥田先生に口腔内スキャナーによるスキャンから得られたデジタルデータをもとにできたカスタマイズブラケットをインダイレクト法で装着する具体的な方法を説明していただきました。
リンガルブラケットの脱離は著しい治療の遅れが生じ、むだなチェアーサイドの治療時間の浪費や他の患者様の予約時間のしわ寄せになります。
ブラケットの脱離に起因する急患の対策とブラケットの脱離の防止と脱離の際の正しい位置への再接着させるための接着材料についても紹介がありました。
昼食と矯正関係の業者ブースにて
昼食の時間を利用してアソーよりニューハーモニーのオーダーの仕方のくわしい説明と料金の設定説明がありました。
会場の背後には業者のブースが数箇所あり、私はアンカースクリュー(インプラントアンカー)とセルフライゲーションブラケットのメーカーに興味があり今後の連絡先などを相談、確認しましたが、舌側矯正にかかるコストは決して安いものではないことをいやでも認識することになりました。
私の後ろの席にいた3人の若手の先生はコストの高さにどのように対応していけばよいのか話をされているのが聞こえてきました。
セミナー午後の部
午後の部では松野先生に舌側矯正時に発現しやすいボーイングエフェクトについてアニメーションを使用して詳しく説明していただきました。
舌側矯正の問題点
・ボーイングについては昨年も同様にくわしく解説していただきましたが2回目となる今回、もう一度確認することができました。
・舌側矯正はブラケットとブラケットの間の距離が通常の唇側の矯正より短く、トルクコントロールが難しいことが良く知られています。
・歯を抜いて前歯を後方に移動させる際にトルクという力が十分歯に伝わらずに前歯の歯冠部が舌側に傾いて「ラビッティング」という状態を作りやすいといわれています。
舌側(裏側)矯正の大きな問題点です。
今回のセミナーに参加した私の大きな目的は抜歯症例で犬歯を含めた前歯を後方に移動する際にバーチカルボーイングが起こり「ラビッティング」をいかにさせないか。
ハーモニーなどのCAD/CAMシステムによるカスタムブラケットとカスタムワイヤーによる舌側矯正は「“ラビッティング”を起こさずに歯を後方に移動できるか?」ということでした。
リンガル矯正では通常の表側の矯正歯科治療と異なり、レベリング、トルクの確立、エンマスリトラクションのステップで治療を行ないます。
講師の先生のケースプレゼンテーション
つづいての講演はケースプレゼンテーションに移ります。
ケースプレゼンテーションは松野先生と奥田先生が先生方のそれぞれ多くの症例を提示していただき、叢生(前歯のがたがた)の強い場合の対処の仕方を抜歯症例、非抜歯症例に分けてご教示いただきました。
また抜歯症例で犬歯を含んだ前歯を後方に移動させる(エンマスリトラクション)症例について注意深く観察しました。
最後にインプラントアンカーと特殊なアームのついたワイヤーで治療した上顎の出ている(ガミーフェイシャル)症例の治療例をCTによる治療後の状態までお話していただきました。
講演会の終了後、帰路にて
今回のセミナーだけではないのですが、いずれのセミナーでも受講後は本日、ご教示いただいたテクニックや情報をいかに自分の診療に取り込み、患者様に役立てようかという前向きな思いと、歯科診療、矯正歯科治療を実践する環境や現実など直面している思いが交錯します。
今後、常滑の矯正歯科の久野歯科医院では舌側矯正などの症例によってはインプラントアンカー(アンカースクリュー)についても使用の検討をしなければならないと思います