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こちらでは、歯周病に関連する様々なリスクなどについてご説明を掲載しております。
常滑市の歯医者(歯科、矯正歯科)、久野歯科医院です。
皆様の役に立つ歯科の情報をお知らせします。
口腔粘膜の2ヶ所以上の部位に炎症がみられることをいいますが、
口唇や舌に単独で炎症のあるものは口唇炎、舌炎と呼んでいます。
症状は様々ですが、接触痛(さわると痛い)がよくみられます。
そのほか調味料がしみたり、唾液の分泌過多やリンパ節の腫れ、発熱がみられることもあります。
口内炎の原因により色々な口内炎があります。
ウイルス感染による口内炎(疱疹性口内炎)
水痘ウイルス、帯状疱疹ウイルス、ヘルペスウイルスなどが原因です。
症状は口腔粘膜にアフタ性口内炎が広い範囲でみられます。
乳幼児に好発しますが成人にもみられます。
治療は口腔内は清潔に保ち、全身的には抗ウイルス薬を使用します。
潰瘍性壊死性口内炎(ワンサン口内炎)
細菌の混合感染による口内炎です。
症状は歯と歯の間の歯ぐきから壊死性の潰瘍が急激にできはじめます。
それが頬の粘膜や上あごの粘膜に拡がっていきます。
治療は口腔内の洗浄と全身的には抗生物質を使用します。
必要に応じて点滴による栄養補給をします。
自己免疫疾患(膠原病)による口内炎
全身性エリテマトーデス、ベーチェット病などの全身疾患の中には
口腔症状として口内炎ができる時があるので注意を要します。
治療は原因となっている疾患の治療を行い、口腔内を清潔に保ちます。
カンジタ性口内炎
免疫力が低下するとカンジタという真菌(カビ)が口腔内に繁殖します。
粘膜が痛み、ガーゼなどで拭うと白く表層がとれ、その下層が赤くただれています。
入れ歯の清掃ができていないと入れ歯の下の粘膜面にできることも多くあります。(義歯性口内炎)
治療は口腔内の清潔を保ちカンジダ菌を取り除くことと抗真菌薬を口腔内と全身的に使用します。
器械的刺激による口内炎
歯・修復物の鋭縁などがありその慢性的な接触や刺激により粘膜の口内炎ができるときがあります。
粘膜、歯肉への慢性的な刺激は口腔がんの原因にもなるので注意を要します。
治療は原因を除去します。
アフタ性口内炎
口腔粘膜に1個~数個の小さな円形のただれを生じる口内炎です。
そのただれは接触すれば痛みがあり、ものにしみることがおおくあります。
20~50歳代の女性に多く見られますが、他の年代にも見られます。
原因は不明ですが日常で一番多く見られる口内炎です。
治療はレーザーの照射、副腎皮質ホルモンの軟膏に塗布、
はり薬などありますが決め手になるものはありません。
2週間ほどで治癒しますが、繰り返し再発することも少なくありません。
扁平苔線
皮膚粘膜の炎症性角化病変です。
口腔粘膜では網状、線状、環状の白い病変の周囲が赤くなるのがよくみられる症状です。
煙草を吸われる方にもよくみられ、周辺の頬粘膜は白っぽくなります。
ただれや出血を伴うものもあり、刺激性の食品に痛みを感ずることもあります。
原因不明ですが禁煙することが治療の第一歩となると思います。
悪性腫瘍による口内炎
口腔がんの初期には口内炎と同様なただれ(潰瘍)がみられることがあります。
お口の中をポピドンヨードなどでうがいをして清潔に保ち2週間ほど様子をみましょう。
痛みがひどいようであれば歯科医院へ来院されるとよいでしょう。
3週間を超えて治らないようでしたら一度歯科医院を受診しましょう。
常滑市の歯医者(歯科、矯正歯科)、久野歯科医院です。
皆様の役に立つ歯科の情報をお知らせします。
永久歯の第1大臼歯のことを一般的に6歳臼歯といいます。
6歳くらいに生えてくるので6歳臼歯と呼ばれています。
第1大臼歯(6歳臼歯)は下顎の前歯とともに、
永久歯の中で一番始めに生えてきて、上と下の歯の噛み合わせを決定します。
咬合の鍵(Key of Occlusion)と呼ばれ、犬歯と共に咬みあわせを育成する大切な歯です。
乳臼歯がむし歯でおおきく崩壊していると
第1大臼歯(6歳臼歯)は生えてくるガイドがなくなり
正しい場所に生えてこない場合があります。
その結果、歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼします。
第1大臼歯は、乳臼歯の1番奥のさらに奥に生えてくるので
歯ブラシが届きづらくなります。
そのため、みがき残しが多くなります。
また、生え始めの時期はエナメル質も柔らかく、
酸にとても弱い状態なのでむし歯になりやすくなります。
第1大臼歯をむし歯にしないためには
飲み物の与え方や仕上げ磨きなどの保護者様の家庭でのお手伝いがとても重要です。
むし歯や歯周病で第1大臼歯を失くしますと
その影響は想像以上に、ひろい範囲に及んでいきます。
*下図を参照してください。
第1大臼歯を失くしますと歯列の連続性が失われ、
第1大臼歯の前後の歯が傾いてきたり、咬んでいた歯が延びてきたりします。
歯が移動して調和をなくした歯列弓はさらに、
むし歯を発生させたり歯周病を発病させたりして、咬合の崩壊がすすんでいきます。
歯をなくす事により治療範囲が広がり、治療期間の更なる延長につながってしまいます。
咬合の崩壊の第一歩は初期のむし歯であり、歯肉からの出血などの歯肉炎です。
咬合の崩壊を止めるためには少なくとも、う蝕症第2度までに治療しなければなりません。
むし歯や歯周病にならないように予防につとめ、
むし歯や歯周病が発見されれば早期に治療する事が
咬合の崩壊を止める大きな手段となります。
ホームセルフケアでプラークコントロールを行い、
歯科医院にてプロフェッショナルケアを定期的に行うことで
むし歯や歯周病の予防と早期治療が可能になります。
(D.H.Robertsの図を模写、改変)
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口は食べ物の入る最初の入り口であるだけでなく、
大切なセンサーであると言われています。
食べ物が口に入り、咬むことで食べ物が壊れて
味や臭いがより感じられるようになります。
かむことで食べ物の硬さ、軟らかさ、弾力、
歯ざわりなどを感じることができます。
食べるという行為は脳の3分の2を働かせて行なわれているといわれています。
食品をしっかり、咬むことにより唾液が多く分泌します。
唾液には数々の作用や働きがあり、多く分泌されることでその作用や働きが高まります。
詳しくは「唾液について」のコラムをご覧下さい。
脳の血流量が高まり、脳の活性化に役立ちます。
寝たきり状態に近い高齢者は流動食や咬まなくてもよい軟らかい食物ばかりを摂っています。
咀嚼による脳への刺激は減少してしまいます。
硬い食物を与えたねずみは、やわらかい食物を与えたねずみより
上手に迷路を抜ける、という実験があります。
また、認知症にかかっている人は、歯のない人、よく噛めない人に多いといわれています。
噛むためには、顎を動かすたくさんの筋肉が協調して働かなければなりません。
歯の根のまわりには神経がたくさん取り巻いていて脳につながっています。
噛む時にかかる力の情報は神経によって脳に伝達され、
脳と歯は情報のキャッチボールをしながら、うまく噛めるようにあごを動かします。
よく噛むことは、脳に生き生きと血液を循環させ、
脳の健やかな発育を促し、脳細胞の健康を守ります。
マウスやラットなどのねずみの実験で、
よく咬まなくてはならない硬いえさを食べる方が記憶力が高まるという報告があります。
朝食を食べる習慣のある学生は、朝食を食べない学生より学業成績がよいという報告もあります。
満腹感を得るには血糖の上昇、消化液の分泌、体温の上昇、食物感覚刺激、
血中脂肪酸の増加などが挙げられます。
食品を良く咬んで味わいながら食べることがたいせつです。
急いで、よく咬まないで丸呑みしてしまうと満腹感が得られず
結果、量が増加して肥満の原因にもなりかねません。
食物を機械的に細かくすることで胃や腸などの消化器官での消化吸収をたすけます。
食物の消化を助け、消化管全体の運動を活発にして、栄養の吸収をよくします。
ゆっくりよくかんで食べることは、消化吸収の要であり、とても大切なことですが、それだけではありません。
人間の健康にとってたくさんの意義を持つことが、最近のさまざまな研究からわかってきています。
胃液や膵液などの消化液の分泌も促進されます。
よく噛むことは、顎や顔の筋肉を発達させ、ヘルシーで豊かな表情を作ります。
また、顔の筋肉も口元の筋肉も引き締まって、生き生きした印象を与えます。
食べている時はみんな幸せそうな顔をしていますね。
よく噛むと味や歯ごたえを楽しむことができ、
満足感が得られるので、気持ちが安らぎ、ストレス解消になります。
また人間には食べたいという欲求と同様に、噛むことに対する欲求があります。
たとえば、子供が口に何かを入れているとおとなしくなったり、
大人でもガムを噛んでいるとリラックスできるように…。
噛みたい欲求が満たされることで、結果的に心の健康に役立ちます。
最近の子供や若い人たちのあごがほそくなり、顔が細面になっていることが指摘されています。
これは食物の調理法が変わり、噛まなくていいものが増えたためといわれています。
これはやわらかいものばかり食べていた
江戸時代の徳川家の歴代将軍や、大名の顔の変化と同じだと推測されます。
噛まないためにあごが小さくなった顔は歯ならびが悪くなって、よく噛めない、
かむ力も弱くなってくるという悪循環を招き、健康上さまざまな問題が起こってきます。
成長期に運動すれば手足の骨や筋肉が発育するように、
かむという運動をすることで、あごや顔の発育が促進されます。
噛むことによって歯ぐきや口の粘膜はマッサージ作用を受け、リンパ液や血液の流れが促されて、
歯を支えているこれらの組織の健康を保ちます。唾液の分泌もよくなって口の中を清潔にします。
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永久歯の第1大臼歯のことを一般的に6才臼歯といいます。
この6才臼歯は永久歯の中で最も早く生えてくる歯で、
6才くらいに生えてくるのでこのように呼ばれています。
6歳臼歯(第一大臼歯)は小学校の1年生〜2年生に生えてくる最初の永久歯で
糸切り歯(犬歯)とともに将来のかみ合わせの鍵となる最も大切な歯です。
6才臼歯は永久歯の中で一番始めに生えてきて、上と下の歯の噛み合わせを決定します。
6才臼歯が正しい場所に生えてこないと、
次に生えてくる歯の歯並び、顔の形、噛み合わせに悪い影響を及ぼします。
乳歯の1番奥のさらに奥に生えてくるので歯ブラシが届きづらくなります。
そのため、みがき残しが多くなります。
歯は年齢を重ねるとともに硬くなっていきます。
生えて間もない6歳臼歯のエナメル質はそれほど硬くなく、酸にとても弱い状態なので
小学校の3年生ぐらいまではとても虫歯になりやすい状態にあります。
お母様、お父様、保護者様の仕上げ磨きも重要なむし歯予防のホームケアです。
6歳臼歯で最初に虫歯になりやすいところはかみ合わせ(咬合面)のみぞ(小窩・裂溝)の場所です。
シーラント(予防填足)とは虫歯になりやすい臼歯の「みぞ」を
プラスチックで埋めてしまう処置のことです。
シーラントはフッ化物(フッ素)の応用、ブラッシング、PMTCとともに
虫歯予防の大きな柱の一つです。
シーラントをすることで虫歯菌の付着、侵入、繁殖を防ぎます。
白いところがシーラントで処置した部分で、溝をプラスチックで埋めてあります。
シーラント(予防填塞)はむし歯の予防に有効な方法ですが、むし歯の拡がりに注意を要します。
定期的な健診を行いチェックすることが大切です。
脳出血とは脳血管障害のひとつで、
一般的には高血圧で脳のなかの血管が損傷して起こる出血のことをいいます。
発症は急激で、急速に意識障害がおきることが多く、
片麻痺や四肢麻痺を示すことも多くみられます。出血部位により予後がかわります。
むし歯の原因となる、むし歯菌の「ミュータンス菌」が脳出血の発症に関与しているという
研究報告が国立循環器病研究センターや京都府立医大、大阪大の研究チームから発表されました。
関係しているのは体の血を止めることを阻害する特殊なタイプのミュータンス菌で
口の中の血管から血流に乗って脳の血管まで到達して、血管壁のたんぱく質である
コラーゲンに結合して炎症を起こします。
その結果、止血作用を妨げたり、血管をもろくしたりして脳出血を引き起こすようです。
脳出血は治療よりも予防が大切でリスクファクターとしての高血圧対策が第一です。
塩分の摂りすぎや生活習慣病も脳出血のリスクファクターとなります。
ミュータンス菌は一度、口腔内に定着してしまうと除去が難しくなりますが、その量を減らし、
他のう蝕発生のリスクファクターをコントロールすることによりう蝕の発生をおさえることが可能となります。
歯周病菌が血管に入り、血液を介して全身の臓器に影響を及ぼすことは
このコラムでもお知らせしてきましたが、むし歯菌の「ミュータンス菌」が
脳出血の発症に関係があるとは興味深い研究報告です。さらなる研究がすすむことを期待しています。
鼻疾患で歯科と関係の深いものにはアレルギー性鼻炎、歯性上顎洞炎(副鼻腔炎)、
術後性頬部(上顎)のう胞などがあります。
アレルギー性鼻炎はカビ・ダニ・埃やハウスダスト・ペットの毛などの
アレルゲンと反応することで現れるもので、くしゃみ・鼻水・
鼻づまり・目のかゆみ・頭重感などの症状がみられます。
鼻水により、鼻がつまると、呼吸は当然、口呼吸となり
ドライマウス・口腔乾燥状態が生じます。
花粉症はアレルギー性鼻炎の範疇にはいりますが
アレルゲンが花粉です。
花粉症は一般的なアレルギー性鼻炎と同様の症状をおこします。
さらに花粉症は交差反応を起こして
口腔アレルギー症候群を誘発させることもあります。
アレルギー性鼻炎、花粉症ともに治療薬といわれるものは副作用として唾液などの分泌を抑制します。
その結果、やはりドライマウス・口腔乾燥状態を引き起こします。
当コラムでも繰り返しお伝えしているとおりドライマウス・口腔乾燥はむし歯、歯周病の誘引となり
口臭の発生を助長します。
歯性上顎洞炎とは、むし歯や歯周病が原因で副鼻腔(上顎洞)に炎症を引き起こす病気です。
症状は頬の痛みや頭痛・目の奥に痛みを感じたり、悪臭のする鼻水がのどにたれてきたりします。
急性炎症のあるときはひどい痛みを伴う時もありますが、
慢性経過をたどれば歯はかむと痛い程度で歯の症状が少ないこともあります。
急性副鼻腔炎(上顎洞炎)は風邪をひき、鼻づまり起こすことで歯には原因がなくても
歯に痛みを感じることがあります。副鼻腔炎は原因を見極めることが大切です。
レントゲン検査や口腔内検査を行い原因歯の有無を確認します。
急性炎症を抗生剤と抗炎症薬で抑え、その後原因歯の治療を行います。
状態や症状によっては抜歯を考慮しなければならないケースも多くあります。
術後性頬部のう胞とは慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の手術後、長期の期間を経て発生する合併症です。
初期にはほとんど症状はありませんが、のう胞が大きくなってくると頬と歯ぐきの間の粘膜が
腫れてきたり顔の腫れ、圧迫感、痛みを伴うこともあります。
診断にレントゲン検査は必要ですが蓄膿症の既往があることやお口のなかの手術の痕などからも判断できます。
上顎の歯に違和感を訴え、歯の根の治療をしている時の浸出液の性状からも判断が可能です。
前歯の根の先に慢性炎症があると鼻の下や鼻の横を押さえると違和感や圧痛を生じることもあります。
この場合は鼻に病気があるのではなく歯の根の先に病変が存在し、
歯の根の治療をすれば、違和感や圧痛は和らいでいきます。
このように歯科疾患と鼻疾患には関連性のあるものが多く存在します。
なかなか治らない副鼻腔炎はむし歯や歯周病が原因であったり、口臭は鼻炎による口呼吸、
ドライマウス・口腔乾燥症が原因かもしれません。舌の悪性腫瘍が耳鼻科で見つかることもあります。
耳鼻科と歯科と両方受診することで治療期間を短縮できるかもしれません。
歯周病がウイルス感染症の発症と進展に影響をおよぼすのではないか?
という研究がすすんでいます。
ウイルス感染症にはインフルエンザ、ヘルペスウイルス感染症、エイズなどがあげられます。
インフルエンザは、皆さんご存知のように
インフルエンザウイルスにより感染する病気です。
毎年型を変えて、季節性のインフルエンザが流行します。
インフルエンザウイルスが体内で増殖するにはヒトの細胞の
内外にある特定の酵素の働きが必要となります。
歯周病菌のつくる特定の酵素がウイルスの感染能力の獲得に
関係していることが判明したそうです。
口腔ケアがしっかりできている介護福祉施設では
そうでない施設にくらべてインフルエンザの発生率が
10分の1であったという報告があります。
高齢者は免疫機能が低下し、お口のケアが悪いとインフルエンザに
感染しやすく重症化しやすいとの指摘が日大の落合教授からありました。
インフルエンザから上顎洞炎などの副鼻腔炎を起こしますと歯やその周辺に痛みを感じることもあり
歯科医は判断を誤らないように注意しています。
初期の歯周病の人がインフルエンザに感染し、発病すると免疫力が低下することで、
歯ぐきが大きく腫れ、歯周病が急に進行する可能性があります。
エイズに関しては歯周病菌が作り出す酪酸が潜伏感染している
HIVを活性化させエイズの発症につながる可能性があり、
さらに歯周病菌のだす炎症性サイトカイン(TNF-αなど)も
HIVの増殖を促進させるという研究結果を報告しています。
歯周病菌が原因となる疾患には細菌性の肺炎や細菌性の
心内膜炎があり、歯周病が誘因となる疾患には糖尿病、動脈硬化、
低体重児出産、バージャー病などがありますが、潜伏感染HIVの
活性化に歯周病が関係している可能性がでてきました。
お口の中を清潔に保つことがとても重要です。
私はいままでに口腔内カメラを3台使用しています。
東京歯科大学補綴科に在籍していたころ記録をとる事の大切さを学びました。
補綴第2講座には教室員用としてメディカルニッコールという口腔内カメラがあり、
とてもよい写真がとれましたがレンズの交換が煩雑なのと重量があり、撮影の手伝いが必要でした。
ニッコールレンズ、本体ともにとても高価で無給医局員にはとても手の出ない代物でした。
その後助手に採用され、研究室を退局する際に退職金で
一眼レフのオリンパスOM-2に口腔内が撮影できるように
マクロレンズ、テレプラス、リングフラッシュなどを
つけてもらったものを研究室の出入りのカメラ屋さんから購入しました。
しかしやはり重く、取り回しが悪く手伝いが2名必要で、
取れた写真も不満足なことが多くありました。
3年ほど使用したでしょうか。カメラ自体が悪いのではなく、
私のカメラ、撮影に対する知識不足が大いに関係しておりました。
そこで口腔内写真の撮影法の講習を受けることにしました。
当時は歯周病の手術とかフルマウス=リコンストラクション(全顎の歯冠修復)の講習が真っ盛りの時で
歯科医でない講師に写真撮影の実技の講習を受けることは珍しかったと思います。
その講習に用意されていて、使用したカメラは軽量で操作もしやすく
衛生士にも撮影をまかせられるものでした。早速、講習の講師を
していただいたカメラ屋さんに注文して購入しました。
一眼レフのペンタックスZ50pを歯科の口腔内撮影仕様にしてある
カメラで、非常に使いやすいものでした。
6年ほど問題なく使用しておりましたが、患者様の説明に写真を
使用するための準備には時間がかかりました。
現像されたスライド写真の保管や患者様にお渡しするための
写真のプリントなど使用頻度が多くなればなるほど管理と時間が
必要となり、気がつけばスライド写真のファイルが山のように
積まれていました。
当時より口腔内写真を撮影していた歯科医は高名な先生でなくても同様な悩みを抱えていたと思います。
歯周病で失った骨が再生できる薬(エナメル質由来タンパク:EMD)が
話題になり患者様に応用され始めた頃にデジタルカメラが
口腔内撮影に応用され始めました。
それから2年ほど経ち勉強会の仲間と検討して現在私が使用中の
ニコンクールピクス950を購入しました。
いまのコンパクトデジカメの一種です。
歯科仕様のものではないので光が奥まで届かないのですが
使い勝手が非常によく片手で操作が可能です。
ニコンクールピクス950はコンパクトデジカメですが
ニッコールレンズが使われていてデジカメの傑作といわれ、
根づよいファンがいるそうです。
このカメラを12年ほど使用しています。
ホームページに写真を掲載するようになってわかったことなのですが、
記録サイズ、画質のモードも変えることなく使用することができ、手放せません。
このほどコンパクトデジタルカメラに装着できる光が奥まで届くアダプターを偶然みつけました。
今後、歯科仕様のカメラの購入を考えていますが構造が単純なわりに高価で、
まだまだこのカメラを引退させることはできないでしょう。
口呼吸は全身の疾患に影響を及ぼします。
影響を及ぼす主な疾患はアトピー、
花粉症などのアレルギー疾患、関節リウマチ、
エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの膠原病、
うつ病、消化器系の疾患などです。
毎年冬になるとインフルエンザの流行や休校がニュースになります。
インフルエンザの対策としてよく言われるのが
「手洗い、うがい、マスク」、つぎにワクチン、
そのあとに抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、イナビル)です。
口呼吸をしているとインフルエンザウイルスは口から入り、ダイレクトに気道へと侵入して行きますが、
鼻呼吸をしていると鼻からは鼻粘膜のフィルターにウイルスの付着した空中の浮遊物がつかまり、
温度の高温への変化とともに気道への侵入が阻止されます。
鼻呼吸は生体の免疫を活性化する要素のひとつであると推測されます。
口呼吸と歯科疾患は他の疾患と同じように或いはそれ以上に関係が深く、
矯正治療においても口呼吸は悪習癖です。
口呼吸がありますとお口の中の乾燥が誘発されます。
口腔の乾燥は唾液の分泌を少なくさせ、口臭の発生、むし歯の発生、歯周病の悪化などを引き起こさせます。
常に口呼吸がありますと舌の位置が本来の位置より下がってしまい様々な不正咬合の原因にもなってきます。
開咬や上顎前突などの不正咬合がありますと、
口を閉じることができず口呼吸となり口腔乾燥を生じることになります。
このように歯科疾患と口呼吸は密接に関係し、悪循環をもたらします。
口呼吸を是正し鼻呼吸に変えることで関連して起こる負のサイクルを断ち切ることができます。
女性はホルモンバランスの不安定な時期がございます。
女性ホルモンの増加する思春期、妊娠中、
そして女性ホルモンの減少する更年期が
その不安定な時期にあたります。
思春期、妊娠中は女性ホルモンの分泌量がふえ、
女性ホルモンを好んで繁殖する歯周病菌が増殖して
歯ぐきがひどく腫れやすくなります。
出血がありますと血液に対して違う種類の歯周病菌が増殖してまいります。
以前に当コラムで歯周病は早産や低体重児に影響することをお話しました。
女性は45歳から55歳の間に更年期を迎えます。
この時期には体内で分泌されていた女性ホルモンが急激に減少して様々な症状が発現してきて
肉体的にも精神的にも不安定な時期といわれています。
その症状は火照り、のぼせ、冷え症、発汗、動悸、肩こり、腰痛などで、
イライラ、憂鬱、不眠などもみられます。
更年期以降は女性ホルモンの減少により皮膚のみずみずしさを
失うばかりでなく、唾液の分泌が減少しお口の中が乾燥してきます。
唾液の分泌が減少すると自浄作用という唾液の働きが低下し、
歯周病菌が多く繁殖し歯周病が急速に進行してしまいます。
女性ホルモンが盛んに分泌されている時は骨の形成も活発に行われ、
骨密度は20歳前後で最大となり40歳から50歳代にかけて
女性ホルモンが減少する更年期には骨密度は急速に低下していきます。
骨租しょう症は女性に多く、特に更年期以降に急速に増加していきます。
歯周病と骨租しょう症の関係についても当コラムでお話しました。
大腿骨と顎の骨の骨密度は比例するといわれていて、歯や歯周組織を支えている骨(歯槽骨)が
スカスカになると歯がぐらぐらと動いて抜けやすくなることにつながります。
女性ホルモンの低下に伴い、糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病にかかりやすくなりますが
歯周病があるとこれらの全身疾患を引き起こすリスクが高まるといわれています。
女性はホルモンバランスや体調の変化で歯周病になりやすいと思われます。
常日頃から歯周病の予防に心がけ、歯のトラブルを解決しておくことはホルモンの補充療法や
カルシウム含有食品の摂取とともに更年期をうまく乗り越える対策の一つだと思います。
高齢者の方が認知症になってからどうするかではなく、
認知症にならないためにはどうしたらよいのでしょうか。
口腔ケアをすることでお口の中を清潔に保ち、
口への刺激が脳に働きかけ認知機能を高めます。
お口の中を清潔に保つことはもっとも大切なことのひとつですが、
他にも歯科でできることがいくつかあります。
その一つとして「良質な入れ歯を装着すること」があげられます。
上下の顎に歯があって(残っていて)咬みあわせがある場合(咬合支持がある)
或いは入れ歯を装着している者は、咬みあわせがない(咬合支持がない)者や入れ歯をはめていない者に
比べて身体平衡能(平衡感覚)に優れている・下肢筋力に優れているという報告があります。
さらに、自立歩行可能な認知症高齢者を対象にした転倒に関する研究を見ると
1年間に2回以上転倒したものには咬合が崩壊しているものが多く、
またこれらに対して入れ歯を入れて咬合の回復を図ると、転倒回数が減ったという報告があります。
機能的に優れた入れ歯を装着することで転倒・骨折を予防できます。
高齢者がひとたび骨折すると治癒が悪く寝たきりになることもしばしば見られ、
介護が重症化します。また入れ歯をはめていないときは
入れ歯をはめているときに比べて喉頭への流れ込みが多くなるという
報告もあります。喉頭への流れ込みは肺炎のリスクを4倍高めます。
咬みあわせがなくなると当然嚥下機能も低下します。
最近ではフレイルという言葉が使われ始めています。
フレイルとは健康な状態と介護が必要な状態の中間に位置している
状態のことをいい、今までは虚弱とか衰弱とか訳されていました。
肉体的フレイルにはお口からの食物の摂取が大きくかかわっています。
介護予防・介護の重症化予防の柱のひとつに「閉じこもり予防」があります。
閉じこもりは社会的フレイルです。長びく極度な落ち込みなどの精神的フレイルを予防し、
高齢者の生きがいやQOL(生活の質)を高めなければなりません。
義歯の具合が悪く、ものが食べにくいと毎日の食生活に影響がでてきます。
入れ歯に痛みがあると装着している人は誰でも不愉快で憂鬱な気分になってしまいます。
高齢者のQOLに食べる楽しみはおおきく相関しており、
良質な入れ歯を装着している高齢者はQOLが高く、また元気で外出し活動的です。
入れ歯の具合が悪いと調理にも時間がかかり、食事の介助の時間も長時間になります。
食べるという行為は脳の3分の2が働くといわれています。
介護予防には口腔機能の向上が有効で認知症の予防に歯科もかかわりがあることを
ご理解いただきたいと思います。ものが咬みにくい、痛みがあり入れ歯をはずしているなど、
入れ歯に不具合があれば、来院することをお勧めください。
年を重ねてまいりますと体の免疫機能の低下、
変調がみられる様になり抵抗力が減退してきます。
細菌による感染症に罹患する機会も増えてきます。
慢性の細菌感染症である歯周病も同じように年齢が増えると共に
症状が進行し、45歳ごろから歯をなくす人が増える傾向があります。
長崎大学の研究により歯周病の進行には過剰な免疫反応が
影響していることがわかりました。
その内容は
「115名の健康な成人女性を対象にして歯周ポケットの深さ、歯垢(プラーク)の量、
唾液中の歯周病菌の量、血液中の歯周病菌の毒素に対する抗体量などを調べた結果、
加齢とともに歯周病の進行している人の割合が増加傾向にあり、
・歯周病が進行している人ほど抗体や歯垢の量が多い
・歯周病菌に対する抗体が多い人ほど歯周病が進行している
・歯周病菌の量より、菌に対する抗体の量のほうが炎症の進行程度にかかわりが強い
歯周病菌の抗体の量が年齢とともに増え、抗原を排除しようと過剰な免疫反応が
起こりやすくなり歯周病の罹患率が上昇する可能性が考えられる」
ということでした。
もう年だから仕方がないと考えず、高齢になってもお口のセルフケア、
プロフェッショナルケアを続けることが大切です。
その行動が健康寿命の延長につながることになるでしょう。
高齢になってからでは、事柄を柔軟に受け入れることができなくなる場合もございます。
定期的に起こってしまう肺炎がご自身の口腔内の衛生環境にあることが理解できない方も見受けられます。
若いうちから正しい知識を吸収し、正しい方法でブラッシングをはじめとする
口腔ケアを身につける事が大切です。
8020達成者には歯ならびの悪い方はほとんどいらっしゃいません。
(写真は日本歯科医師会雑誌より転記)
成人の約8割は歯周病にかかっています。
歯を失う約4割が歯周病が原因であると言われています。
ひとの集団を対象にした疫学研究でアルコール摂取の多い人に
歯周病が多くみられるという報告がありました。
そこで岡山大学では、ラットを用いてアルコールの摂取が
歯周組織に及ぼす影響をしらべました。
その結果、歯周病のないラットにアルコールを摂取させると、
歯を支えている骨がとても多く吸収して歯肉に炎症が起きていた。
歯周病にかかっているラットにアルコールを摂取させると
歯肉の炎症がさらに悪化した。
という結果がでました。
このことによりアルコールの摂取が歯周病の発症と進行に直接影響することがわかりました。
さらにアルコールを摂取したラットの歯肉を調べたところ活性酸素が多くつくられ、
抗酸化力が低下していたこともわかりました。アルコールの摂取による歯周病の進行・悪化には
活性酸素が重要な役割を演じていることが想像されます。
国立長寿医療センターの遠藤英俊先生によると
アルコールの摂取により脳の海馬の萎縮がみられるようです。
しかし1週間に3回30分の有酸素運動を行うことで
海馬の萎縮を防止することができるそうです。
飲酒は適度であれば、
血液循環を良くし動脈硬化の予防にもなるようです。
喫煙は、歯周病以外にも様々な疾患や歯科疾患の大きな危険因子です。
喫煙するとニコチンの血の流れを阻害する働きにより、唾液の分泌が悪くなります。
唾液の分泌が悪くなると口腔内の自浄作用が弱まって歯垢が沈着しやすくなります。
その結果、歯の磨きにくいところに歯垢が沈着してむし歯の発生する割合を高めます。
以前に治したむし歯のところからむし歯になる(2次カリエス)も多くなってきます。
煙草を吸っている人の頬の粘膜は白っぽく、
レース状・網目状に白い模様がついているのが多くみられます。
それは扁平苔癬という粘膜疾患です。
煙草に含まれる発ガン物質や喫煙によって生じる活性酸素は
がんを抑制する遺伝子を傷つけ、がんになりやすくなります。
喫煙によって分泌されるアドレナリンの影響でがんを攻撃する
抗体の働きが弱まり、がんの成長を助長することになります。
喫煙すると、がんの前身である白板症になる可能性が高くなり、
口腔がんになるリスクがさらに高まります。
白板症が、がん化する確率は全体の5%ほどですが、
赤みのある部位が混在していたり(紅板症)すると確率が高まります。
喫煙を続けるとさらにがん化するリスクが高まります。
口腔がんは大部分が扁平上皮がんで放射線、抗がん剤ともによく反応し、治りやすいがんですが
手遅れになると死亡したり、大きな障害・後遺症が顔面周辺に発生して著しいQOLの低下を招きます。
喫煙は歯の表面にタール分が沈着しやすくなります。
喫煙は歯肉でのメラニンの合成を促進し、
歯肉に色素が沈着しやすくなります。
しかし長期禁煙することで歯肉の状態が正常になります。
さきのコラムでふれたように子供を持つ両親が喫煙者であった場合
受動喫煙により子供の歯肉にメラニン色素の沈着が
見られることがあります。
タール分はプラスティック(レジン)修復した歯に容易に沈着します。
修復した境目などは特に着色しやすく見た目が悪くなります。
インプラント治療の際には喫煙が原因で毛細血管の収縮が起こり、
歯肉や骨に酸素が十分供給されなくなりインプラントと骨の結合がしにくくなります。
インプラントの問題の発生率は喫煙者では煙草を吸わない人の7倍ほどに高くなります。
インプラント手術1週間前より8ヶ月後まで禁煙すると、
問題の発生率は煙草を吸わない人に近づくという報告があります。
喫煙の影響で歯肉が弱っていて、口腔内の状態に変化が置きやすくなり入れ歯が合わなくなってしまいます。
唾液の分泌量も減るので入れ歯のなじみが悪くなります。
入れ歯を入れたまま煙草を吸っていると慢性刺激で白板症になる可能性がたかくなります。
喫煙により付着したタールは肺に中にも独特のにおいを発生させ歯周病からの口臭と混ざり合い、
他の人との会話を不愉快なものにしてしまいます。
喫煙をすると非喫煙者に比べて2〜6倍のリスクで歯周病になります。
しかも1日の煙草を吸う本数が増えれば歯周病のリスクも増加します。
煙草を吸っているとニコチンの血管収縮作用で、血の流れが悪くなります。
その結果、歯肉が貧血状態となり歯周組織や歯自体をいためることになります。
貧血状態となるために歯肉が炎症を起こしても出血が抑えられて歯周病に気がつきにくく、
気がついたときには相当歯周病が進行してしまっていることも多くあります。
ヘビースモーカーの人の口腔内は過敏になり、「タバコ臭く」ニコチンで色素が沈着し歯肉が黒くなります。
妊婦の方の喫煙は歯周病とダブルパンチで低体重児出産のリスクが非常に高くなってしまいます。
喫煙は歯周病になりやすいだけでなく、歯周病の治療の反応が悪く効果が低下します。
喫煙者は抜歯などの外科処置を行った場合に傷跡の直りが非常に悪く、
血の流れが悪いことに起因しているようです。
インプラント治療を行う場合には禁煙が最低の条件となります。
煙草の煙の中でも副流煙は毒性が強く周りの人の迷惑となり悪影響をあたえます。
下の写真はお父さんが家で煙草を吸っている小学生女子の口腔内写真です。
茶色の色素沈着はお父さんの煙草の影響があるのかもしれません。
家庭での喫煙は家族の健康を損ね、次世代へも悪影響を与えることになるのです。
お茶にはガンの予防、インフルエンザの予防などすばらしい効能がありますが、
お茶の渋みの成分のカテキンにはむし歯予防作用、
歯周病の症状の一つである口臭の抑制作用があります。
お茶に含まれるビタミンC,ビタミンB2には皮膚・粘膜の健康維持に、
フッ素は虫歯を予防する効果があり、フラボノイドは口臭に対して
消臭効果にすぐれています。
お茶には種類があり、一般的には緑茶のことを指します。
緑茶はむかしは、薬であると考えられていました。
ウーロン茶、紅茶は生成段階で酸化酵素の働きでカテキンが減少します。
緑茶、ウーロン茶、紅茶とも健康なからだづくりにとても効果的ですが、
むし歯の予防・口臭予防ということに関しては緑茶がよさそうです。
緑茶の成分の中でよく「カフェイン」が話題となりますが、緑茶のカフェインは
カテキンとあいまってゆるやかなものになっているようです。
大量に摂取しなければ子供にも、妊婦にも問題はないと考えます。
緑茶のカフェインを問題にして「体液と同じ濃度で吸収が早い飲み物」として
糖分の多く含まれるスポーツドリンクを子供に与えるほうがよほど問題であると思われます。
しかしながら、カフェインを含んでいる飲み物は利尿作用がつよく、
夏場の水分の補給には不向きなのは事実です。
その点を考えると大麦が原料である麦茶はカフェインを含んでおらず、
子供から高齢者まで安心して飲むことができます。
緑茶とは違い、麦茶にはカテキンは入っていません。
むし歯の予防効果は緑茶には劣りますが、
むし歯菌の歯面への定着を阻害する働きがあり、むし歯の予防効果もあります。
食後にお茶を飲むことで歯に付いた食べかすを洗い流し、
食事で酸性に傾いた口腔環境を中和し改善することができます。
最近は夏の熱射病、子供・高齢者の脱水に経口補水液も登場してきています。
毎日の生活の中で必要に応じて飲み物を選択し、健康管理に努めていきましょう。
慢性腎臓病とは慢性に経過する腎臓の病気のことをいいます。
腎炎、糖尿病性腎症、慢性糸球体炎、腎硬化症などが含まれ、数多くある慢性に経過する腎臓病の総称で
「CKD(Chronic Kindly Disease)」と呼ばれています。
慢性腎臓病は初期には自覚症状がなく、進行してくるとむくみ、貧血、倦怠感、息切れ、
夜何度もトイレに行くなどの症状が現れてきます。 一度あるレベルまで悪くなると自然に治らず、
放って置くと取り返しがつかなくなる可能性のある怖い病気です。
肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などのメタボリックシンドロームで発症のリスクが高まります。
腎臓は肝臓とともの体内の解毒を担当する重要な臓器です。
腎臓の働きには
ことがあげられます。
歯周病にかかると歯周病菌の産生する毒素や菌自体が血管に入り込み、
血液の流れと共に全身に運ばれ、臓器、骨、関節などに
悪影響を及ぼすことをこのコラムでもお伝えしてきました。
腎臓の機能が低下いたしますと歯周病菌の産生された毒素を
取り除くことができません。
体の水分量に影響が出て
口腔乾燥症(ドライマウス)となる場合も多くみられます。
骨量にも影響がでて歯周病の悪化や
不正咬合を誘発するおそれがでてきます。
慢性腎臓病を早期発見するためには定期的な健康診断を受け、
尿検査、血圧の検査・測定を行います。
尿検査は尿検査試験紙(テステープ)、
血圧の測定は家庭用の血圧計で家庭でもできます。
歯周病を含めた生活習慣病を予防することで
大切な働きをする腎臓を守ることができると考えます。
うつ病は以前は「心のかぜ」などと言われてきましたが、
現代のストレス社会では、誰でもかかる可能性のあるとても一般的な疾患です。
うつ病の生涯有病率(一生のうち,その病気に一度以上かかる確率)は12%と報告されており、
8人に1人は生涯に一度はかかる病気です。男性よりも女性の方がかかりやすく、ほぼ2倍となっております。
うつ病は早期に適切な診断をして治療をはじめれば完治する可能性が高い疾患です。
うつ病は生真面目で几帳面な人が発症することが多いとも言われていて、
そのような人はブラッシングに関してもまじめに取り組んでいます。
しかしうつ病にかかってしまうと気力の減退や集中力の低下などが起こりブラッシングなどの
ホームケアが不十分になり歯周病が悪化したり、抵抗力が弱まると歯周病にかかりやすくなります。
うつ病の症状が口のなかの痛みや違和感となって現れることがあり、
診査、診断を行う時には歯科医は注意が必要です。
ストレスが加わったり、うつ病が発症すると自律神経に変調をきたし、
唾液の分泌量が減り、口腔内の渇きを引き起こします。
この渇き(口腔乾燥・ドライマウス)が歯周病を進行させる大きな要因にもなるのです。
うつ病の治療は十分な休養などとともに薬物療法が中心になります。
うつ病の治療に必要な薬物の大きな副作用に唾液の分泌を抑制する口腔乾燥があります。
唾液の分泌が低下し口腔内の乾燥状態が続きますと、口臭の発生、むし歯の多発、
歯周病の悪化に拍車をかけることになります。うつ病の治療中は歯周病が悪化する可能性があることを
念頭にいれてホームケアや口腔内の保湿に心がけることが大切です。
高脂血症とは血液中の脂質成分の一つ或いはそれ以上が増加している状態をいいます。
日常の臨床検査では中性脂肪、総コレステロール、高比重リポタンパク(HDL)の3種類が測定されています。
高脂血症は高血圧症とともに動脈硬化を進行させ
心臓病や脳梗塞などのリスクを高める因子としても注意が必要です。
動脈硬化は血流循環を滞らせ、血管内壁にプラークが溜まります。
プラークが剥がれ落ち、移動して心臓病や脳梗塞を引き起こします。
こうした高脂血症などの生活習慣病のメカニズムに歯周病が影響しているらしいことがわかってきました。
高脂血症(高コレステロール血症・※高トリグリセライド血症)は高血圧症、高血糖、肥満などと
相互にからみあって糖尿病や心臓病などの生活習慣病のリスクを何倍にも高めます。
この4つの危険因子のうち、どれか一つでも高いと心臓病のリスクは5倍になり
二つ重なると10倍に上昇します。歯周病はそのリスクをさらに高める可能性があります。
さらに喫煙が加わりますと非常にリスクが高まります。
歯周病は細菌の感染による慢性の炎症で、細菌の作る毒素や炎症を引き起こす物質が
歯周組織の患部から血液の中に入り、全身に悪影響を及ぼすことがわかってきています。
歯周病を全身とのかかわりでとらえることは歯周病の予防、生活習慣病の予防、
双方にとってとても大切であるといえるでしょう。
※高トリグリセライド血症とは高脂血症のなかで中性脂肪の多いタイプのものをいいます。
敗血症とは感染巣から菌が血中に持続的に、
或いは間歇的に侵入することにより、重い全身症状を呈する病気です。
原因菌はグラム陰性桿菌が多く、最近は化学療法(抗生剤)の進歩によって
弱毒性の細菌の感染が増加傾向にあります。
症状は原発巣の症状に加え、
高熱、悪寒、悪心、嘔吐、意識障害がみられる事が多く、
ショックを伴うこともあります。
治療するには原発巣の治療を行うと共に、原因菌を特定し原因菌に
感受性のある化学療法剤(抗生物質)投与するのですが
予後不良のとてもこわい病気です。
歯周病菌もグラム陰性桿菌が多くみられます。
歯周病で歯肉が腫れていたり、出血がありますと、
歯周病菌が簡単に血管の中に入り込み、一時的な菌血症を起こします。
健康な人の場合は免疫が働き、大事には至らないのですが高齢者や、抗がん剤治療中の方、手術後の方、
リウマチなどの膠原病で免疫抑制剤を使用している方、重症の糖尿病の方などは
免疫機能・抵抗力の低下により細菌が血管内で増殖して全身に細菌が運ばれ、
多臓器不全など敗血症を引き起こすリスクが高くなります。
常日頃の歯周病のセルフケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアにより
命にかかわる重大な病気にかかることを未然に防ぐことができると考えられます。
高血圧症には本態性高血圧と2次性(続発性)高血圧に分けることができます。
ここでいう高血圧とは本態性高血圧症のことで高血圧症の80〜90%を占めています。
高血圧症は動脈硬化と密接な関係があり、高血圧を予防し血圧のコントロールを
十分に行うことで心血管疾患、脳血管疾患に罹患する可能性、確率を低くすることができます。
歯周病と心血管疾患、動脈硬化との関係については当コラムでお話いたしました。
歯周病菌が歯肉の末梢血管から血流に乗り血管の内壁にプラークを形成します。
その結果血管は弾力性を失い血管は細くなり(頚動脈狭窄など)、血圧が上昇する因子の一つとなります。
高血圧治療の目的は、血圧を下降させることではなく、
血圧が高いことにより起こる血管性の合併症を防止することにあります。
血圧のコントロールは年齢に応じたきめの細かい配慮が必要で超高齢者では
血圧が低すぎると生活・行動に影響のでることもしばしばです。
また降圧剤(Ca拮抗剤)は副作用として
歯肉増殖があらわれてくるものもあるので注意を要します。
軽度の歯肉の腫れであれば、プラークコントロール、
ブラッシングで抑えることができますが、
大きく増殖したものは歯周病を悪化、進行させる可能性が高く、
場合によっては歯肉の切除をしなければ治らないこともあります。
歯肉増殖を起こす可能性のある代表的なCa拮抗剤にはアダラート、ベルベッサー、アムロジンなどがあります。
また降圧剤(利尿剤を含みます)の副作用には口腔乾燥(ドライマウス)が多くみられます。
ドライマウスは歯周病を悪化させ、口臭の発生を助長します。
高血圧症の患者さまはそうでない人に比べ歯周病にかかっている割合が1.5倍との報告もあります。
歯周病のケアを行うことで高血圧を予防できるという研究報告もされています。
歯周病のケアを行い生活習慣を見直し、できれば“血圧の薬”に頼ることなく
血圧のコントロールができれば歯周病の悪化を防ぎ、悪循環を断ち切ることが可能となるでしょう。
現在、日本では成人の30%が脂肪肝であると言われています。
脂肪肝の20%が慢性肝炎に移行し、慢性肝炎の20%は5年間で肝硬変に肝硬変の70〜80%は
肝臓がんに移行するといわれています。
脂肪肝の中で飲酒習慣のないものを非アルコール性脂肪肝疾患と呼びます。
非アルコール性脂肪肝疾患は進行性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と
良性の非アルコール性脂肪肝にわけられます。
歯周病菌のなかでもグラム陰性細菌のポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)、
タントネレラ・フォーサイセンシス(Tf菌)、トレポネーマ・デンティコーラ(Td菌)の3種は
「レッドコンプレックス」とよばれ、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の患者様には
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)が多く検出されています。
このことから歯周病菌自体が肝臓に影響を与えていると考えられます。
歯周病菌(Pg菌)由来のエンドトキシン(内毒素)は血管・血液を介して
肝臓に運ばれます。健康な肝臓はわずかなエンドトキシンにも
悪影響を受けず肝障害は起こしません。しかし良性の非アルコール性
脂肪肝となっている肝臓はエンドトキシンの感受性が高まって、
非アルコール性脂肪肝炎(NASH),肝硬変へ進行していくようです。
歯周病菌(Pg菌)由来のエンドトキシンがマクロファージを刺激して
産生されたTNF-α,IL-6,IL-1βなどの炎症性サイトカインは肥満や糖尿病を
悪化させ、間接的に肝臓に炎症をおこしたり、
肝臓を硬くしたり悪影響を及ぼします。
歯周病を予防することで大切な臓器の一つである肝臓を健康に保つことが可能であると考えます。
バージャー病とは手足の酸素を運ぶ細い動脈に炎症が起き、
血管が詰まって血管が栄養を送っている組織が潰瘍や壊疽を起こす病気です。
悪化すると足の指や膝下で切断にいたることもある原因不明の病気です。
日本では難病に指定されています。
東京医科歯科大の研究によるとバージャー病の患者さんのお口の中と血液をしらべたところ
全員、中等度から重症の歯周病にかかっており、詰まってしまった患部の血管のほとんどから
歯周病菌が検出されました。
またこの病気には喫煙が強く関係していることも明らかになっています。
この発見でバージャー病と歯周病の関連が強く示され、
今後の予防法や治療法の開発のための大きな手がかりになると思われます。
歯周病の予防、歯周病を初期に治療することで重大な障害の残る可能性の高い難病にかかるリスクを
低く抑えることが可能であると考えています。
金属アレルギーとは金属が体と反応して現れるアレルギーのことをいいます。
金属アレルギーは一般的にはイヤリング・ピアスやネックレスなどに接触している皮膚が
痒くなったり、腫れたりすることが知られています。(アレルギー性接触皮膚炎)
歯科では、むし歯になって歯の一部分を大きく失ったり、
歯周病などで歯自体を失ってしまうとそれを補うために金属を使用して修復治療をすることが多くあります。
日本で歯科に使用されている合金金属は装飾用の金属とは違い、
安全性の高い金属が使用されていますが、歯科金属アレルギーの患者様はいらっしゃいます。
歯科金属アレルギーの症状は口腔内の違和感や口内炎などよりも、
口腔内から離れた皮膚に発症することが多いようです。
歯科金属アレルギーにより引き起こされる疾患にはアトピー性皮膚炎、掌蹠膿庖症、湿疹などで
男性より女性に多く発症するようです。
歯科金属アレルギーによる皮膚疾患が発症する仕組みは機械的にも温度的にも
過酷な環境にある口腔内の金属修復物から金属イオンが遊離し口腔粘膜や消化管より吸収され、
血液を介して口腔内から離れた皮膚に炎症反応を起こすといわれています。
歯科金属アレルギーのある患者様にはその原因となる金属を特定して
その金属を取り除き治療を行なわなければなりません。
歯科で気を付けなければならないアレルギーは金属だけではありません。
薬物アレルギー、レジンアレルギー、ヨードアレルギー、口腔アレルギー、ラテックスアレルギーなど
多くのアレルギーに注意が必要です。
ご自身の体の体質を知り、安心して歯科治療を受けましょう。
むし歯、歯周病にならないように定期健診、ケアをして予防することも大切です。
久野歯科医院では、常滑・知多・半田といった地域より
矯正歯科治療に多くの患者様がご来院いただいております。
こちらのページでは患者様のお役に立つ様々なコラムを定期的に掲載しております。
今回は「口腔アレルギー症候群について」です。
ある果物・ナッツや生野菜を食べた時に口の中がピリピリしたり、
痒いように感じたりしたことはありませんか?
それは口腔アレルギー症候群(OAS)かもしれません。
口腔アレルギー症候群の症状は果物・ナッツや生野菜を食べた後、
数分以内に唇、舌、口の中やのどにかゆみやしびれ、むくみなどがあらわれます。
しかしこのような症状が現れても大部分の方は食後しばらくすると自然にやわらいでいきます。
口腔アレルギー症候群は果物や生野菜に含まれるアレルギーを起こす原因となる、
たんぱく質(アレルゲン)が口の中の粘膜に触れて起こるアレルギー反応です。
アレルギーの原因となる食物を食べることで発症する点では口腔アレルギー症候群と食物アレルギーは
同じですが、食物アレルギーの場合には分解されずに体内に入るのでより重い症状がでます。
口腔アレルギー症候群のアレルゲンは小腸に到達する前に壊れるため主に口に中にだけ反応が起き、
口腔内で症状が出るため多くを摂取することができません。そのために重い症状のでる確率は少なくなります。
花粉症を引き起こす原因となるアレルゲンの構造が
果物・ナッツや生野菜のアレルゲンの構造に似ているため、花粉症の患者様が果物・ナッツや
生野菜を食べた時に口腔アレルギー症候群が発症することがございます。これを交差反応といいます。
花粉と交差反応が報告されている果物や野菜について(スギはトマト)、(シラカンバはりんご、桃)、
(さくらんぼとイネ科はトマト、スイカ、メロン、オレンジ)と
(ヨモギ、ブタクサはメロン、スイカ、セロリ)で報告されています。
花粉症と口腔アレルギー症候群の合併の頻度は20%程度あるようです。
気管支喘息の既往のある人、即時型食物アレルギーの既往のある人、薬剤のアレルギーのある人、
ゴム手袋の過敏症(ラテックスアレルギー)のある人も口腔アレルギー症候群を引き起こす可能性があり、
フルーツラテックスアレルギー症候群とも呼ばれます。
口腔アレルギー症候群を起こさないようにするためには
アレルギーの原因となる食物を確認して避ける事が必要です。
しかし果物や生野菜に含まれるアレルゲンは熱に弱いので加熱調理をすれば、
食べることができる場合もあります。
アレルギーの発症にはストレス、疲れ、風邪、寝不足、多忙など自律神経が不安定なからだの状態が
引き金になることが多くあります。ご自身の体質を知り毎日の体調を整え、アレルギーの発症を防ぎましょう。
掌蹠膿庖症とは手のひらや足の裏に膿がたまる皮膚の病気です
掌蹠膿庖症の患者数は2.6万人(厚生労働省調査)といわれています。
掌蹠膿庖症の症状は手のひらや、足の裏に膿がたまり、その後かさぶたとなって剥がれ落ちます。
かゆみや痛み、接触痛を感じ痛みのために歩くのにも支障が生じることもあります。
症状は一進一退をくりかえし、自然治癒する場合もあります。
1割の人にはからだの一部にも炎症が起きて関節の痛みなどもあらわれます。
膿は無菌のため、人にうつることはありません。
掌蹠膿庖症の原因は不明なのですが歯周病、むし歯(歯の根の部分に膿がたまる)、
扁桃腺・副鼻腔やリンパ節などの感染、金属アレルギー、喫煙などが引き金になるのではないかと
疑われています。金属アレルギーの中には歯科用の金属によるアレルギーもあります。
掌蹠膿庖症は歯科でできる歯周病の治療、歯の根の治療、つめたり、かぶせたりする治療に使用する
金属を制限することで治る可能性があるのです。このような場合には治療期間が長くなる場合が多く、
やはり常日頃のセルフケアと定期健診・プロフェッショナルケアが大切になってきます。
膠原病を代表する疾患に関節リウマチがあります。
最近の研究報告では歯周病の人は関節リウマチの発症するリスクが2.7倍高くなるとの報告もあり、
関節リウマチの原因は遺伝的要因と環境的要因、ウイルス感染のほかに歯周病菌の関与が強く疑われています。
歯周病菌の1種が関節リウマチの診断に使用されている抗CCP抗体の産生に関与している可能性が
高いと考えられてきています。まだまだ研究段階のようですが歯周病を予防することで
関節リウマチの発症を抑えることが出来る可能性があります。
関節リウマチは葉酸拮抗剤(メソトレキセート)というアンカードラッグ、
生物的製剤の登場で早期治療が可能となり「不治の病」ではなくなりつつありますが
生物学的製剤は高額で3割負担の患者様で30万〜40万円ほど年間に医療費がかかってまいります。
歯周病の予防のために歯科医院で定期健診を受け、プラークコントロールやPMTCを行い、
歯周病菌を減らすことで関節リウマチを発症しないようにしたほうが経済的負担も軽く
健康を維持できるといえそうです。
膠原病の2大疾患は関節リウマチ(RA)と全身性エリテマトーデス(SLE)です。
関節リウマチは手足、膝、肘などの大関節だけでなく、顎関節もよく侵されます。
一般の顎関節症と同様に口が開きづらくなり開けるときに多く痛みが出ます。腫れることもしばしばあります。
痛みが治まると、関節雑音が発生してまいります。
SLEは口内炎ができ、顔に特徴的な紅班が現れることが多く、顎関節炎を起こすこともあります。
RA,SLEは共にシェーグレン症候群(SjS)を伴うことが非常に多く、
口腔乾燥症(ドライマウス)の大きな原因疾患になっています。
SjSはRA,SLAのみならず強皮症、橋本病、原発性胆汁性肝硬変などでも合併することが多いようです。
時にSjSは開口障害をともなった唾液腺(耳下腺、顎下腺)の腫脹がみられることがあります。
いくつかの臨床症状が2つ以上の膠原病には共通してみられます。
これは各々の膠原病の原因が近いところにあるために起こる現象かもしれません。
膠原病には氷山説があり海面状ではRA,SLE,SjSなど一つ、一つ独立した病気に見えますが
海中ではつながりをもっていて原因はひとつであるという考え方です。(下図)
膠原病を臨床症状だけで確定することはなかなか難しく、血液検査が診断には欠かせません。
一般的な検査項目に加え、抗CCP抗体、抗核抗体を調べることが有効です。
膠原病だけでなく口の中に症状のでる全身疾患は年齢を問わず、多くありますので注意が必要です。
人間ドックなどで使用されている肥満の判定基準としてBMIがあります。
BMIとはBody Mass Indexのことで、肥満の判定基準として世界中で使用されている指数のことです。
BMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求めることができ、
18.5未満はやせ・正常、18.5〜は正常、25〜は肥満度1、30〜は肥満度2以上となります。
最近の研究で肥満の人は歯周病になりやすいという報告が世界的にも多数でてきています。
研究報告ではBMI20未満の人を1とすると肥満度1の人は3.4倍、
肥満度2以上の人は8.6倍歯周病にかかるリスクが高まるとの結果が報告されています。
脂肪組織でつくられるTNF-α(腫瘍壊死因子)という物質は、歯を支える骨を溶かし、
歯周病を発症して、歯周病を進行しやすくすると考えられています。
TNF-αは歯周病の原因である歯周病菌がプラークをつくって体との免疫反応の結果、
つくられるサイトカインの一種でもあります。肥満の人は脂肪組織が多いために
TNF-αが多く産生され歯槽骨の吸収が促進し、歯周病が進行すると推測されています。
また大腸に存在するグラム陰性菌の内毒素により肝臓と脂肪組織に脂肪がつき、
その結果体重が増加することが報告されています。歯周病菌はグラム陰性菌を主体としています。
歯周病菌も体重の増加・肥満に関与しているのではないかといわれています。
肥満は生活習慣病・メタボリックシンドロームに大きくかかわっています。
体重の自己管理をすることにより歯周病の発症や進行を食い止めることができるのではないかと推測できます。
動脈硬化とは血管の壁が厚くなり血管がせまくなる疾患です。
動脈硬化を起こしている血管の内壁から数種類の歯周病菌が見つかっています。
歯周病菌は炎症を起こしている歯肉から血小板とともに血管内に入り込み
歯周病菌自体が産生する内毒素によって動脈内壁を傷つけたり、
マクロファージを活性化させサイトカインを産生させて血管に炎症を起こして血管自体を硬くしたり、
血の塊ができるように働いて動脈硬化を進行させると考えられています。
傷つき硬くなってきた動脈内壁には粥状の脂肪性の沈着物がたまり(アテローム動脈硬化)、
粥状の沈着物(プラーク)の量が多くなりプラークは血管から剥がれ落ち、血の塊となって血管を詰まらせます。
頚動脈はプラークのたまる好発部位です。
心臓の不整脈(心房細動)は血液の流れを不規則にして血の塊をつくりやすくしてしまいます。
脳梗塞は脳血管がプラークでつまったり、
頚動脈や心臓から血の塊やプラークが移動して脳血管が詰まる疾患です。
歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になりやすいという報告があります。
血栓が冠動脈を詰まらせれば心筋梗塞を惹き起こします。
歯周病を予防して歯周病のケアを行うという小さな努力で
重大な病気の発症や進行をおさえることができると考えます。
歯を失う大きな原因の2つは歯周病とむし歯です。
65歳以上の高齢者で自分の歯がほとんどなくて、入れ歯を使っていない人は
歯が20本以上ある人に比べて認知症になる確率が1.9倍になる。
歯がほとんどなくて、入れ歯を使っている人は認知症になる確率が1.2倍になる。
硬いものがかめない人はどんなものでもかめる人に比べて認知症になる確率が1.5倍になる。
という厚生労働省の報告があります。
歯がない高齢者で認知症のリスクが高いのは
歯周病が認知症の原因のひとつである脳血管障害と関係していることや、
歯がなくなることでかむ力が低下して脳への刺激が失われていくためであろうと考えられています。
また動物実験の段階ですが歯周病に罹患させたマウスは認知機能が低下し、
記憶をつかさどる海馬にアルツハイマー病の原因となる特殊なたんぱく質が沈着して、
歯周病に罹患していないマウスに比べ面積で2.5倍、量で1.5倍に増加していたとの報告があります。
歯周病の予防、歯周病の治療をすることで歯の喪失を減少させて、
ひいては認知症の予防に役立ち、健康寿命の延長に役立つものと考えます。
口腔がんとは口の中にできる悪性の腫瘍の事で舌や歯肉、頬の粘膜、上あごなどに発生します。
喫煙者、お酒を飲む人、むし歯を放置したままの人などに多く発生するようです。
現在年間7000人の人が口腔がんにかかり、その中で亡くなる人は3000人を超えています。
歯周病にかかっている人は口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がんなどの
発症のリスクが高いことが報告されています。
それ以外でもすい臓がん、腎がん、肺がん、血液のがんの発症率が
歯周病又は歯の喪失と関連があることが示されています。
歯周病とがんの関連性は、煙草を吸わない人、酒を飲まない人で高く、
歯周病はがんに対して独立したリスクファクターであることが推察されています。
歯周病にかかっている人の口腔がんでは悪性度の高いものが多いことも示されています。
お口の手入れが不十分で清掃が不良であることと頭頚部のがんの発症率に相関があることが
疫学的研究により示されています。
お口の中の細菌のなかにはアルコールからアセトアルデヒドを産生する細菌がいます。
アセトアルデヒドは発がん性を持っています。
歯周病菌が発ガン物質を産生しているという報告はいまのところありません。
口腔がんは歯科医院での定期健診のときやメインテナンス時に早期に発見することができます。
CT・レントゲン撮影や内視鏡などの検査は必要ありません。直接、目で見て発見できるのです。
定期的に人間ドックをうけるようにお口の定期健診を受けることが
あなたの命を救うことになるかもしれません。
心臓には血液の流れを一定の方向にする、血液の流れを逆流させないように弁(弁膜)があります。
細菌性心内膜炎は弁膜や大血管内膜に細菌感染が起こることにより
全身の感染症状と心症状が出現する疾患です。
細菌性心内膜炎は急性のものと亜急性のものがあり、
そのうちの亜急性の心内膜炎の原因菌には歯周病菌が多く含まれています。
歯周病に罹患し炎症を起こしている歯肉には多くの歯周病菌が繁殖しています。
歯周病菌は毒素を、免疫細胞はサイトカインを産生し、血液中に入ります。
歯周病菌自体も血液中に入り血管を通って全身に運ばれます。
細菌性の心内膜炎は歯周病菌がダイレクトに心内膜に付着して細菌感染を引き起こさせます。
通常でも抜歯に代表される歯科小手術はもちろん、
歯石の除去、根端病巣の治療においても一時的な菌血症がみられます。
菌血症とは口のなかにいる細菌が感染巣から、または治療の時に血中に侵入することで歯周病や抜歯などで起きます。ほとんど一過性ですが中高年から高齢者で免疫力の低下がありますと感染を受けやすく
容易に細菌性心内膜炎となります。
歯周病があり、原因不明の熱発、歯科治療後に熱発がつづき、
疲れやすく、脱力感、食欲不振などを伴っている場合には亜急性心内膜炎を疑わなければなりません。
心疾患の基礎疾患がなくても、抵抗力の低下があれば細菌性心内膜炎は起こる可能性があります。
細菌性心内膜炎の予後は抗生剤の進歩により著しく改善されてきましたが、
歯周病の全身疾患との関わりが注目されている今日、常日頃の口腔のケアが非常に大切です。
骨粗しょう症は女性に多く発症する、骨密度が低下して骨がもろくなる疾患です。
骨粗しょう症の患者様は病状が進行するまで自覚症状があまりなく、
ひとたび、骨折が起こると、骨折部位によっては寝たきりになるなど患者様の活動性を著しく制限し、
そのために認知症などの合併症が生じます。
女性に多いのは更年期以後の女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が関係しているようです。
骨粗しょう症は早期に予防と治療を行うことで骨密度の減少を抑えることができます。
その結果骨折、寝たきりを防ぐことができます。
寝たきりを防ぐことができれば健康年齢の延長も期待できます。
骨粗しょう症の治療薬の登場で骨折が、かなり防げるようになってきています。
しかし骨粗しょう症の治療薬の中で骨の吸収を抑える薬のビスフォスフォネート系の薬剤(BP剤)に
発生頻度は低いのですが顎の骨に壊死や骨髄炎を副作用として起こすことが報告されています。
BP剤の服用中に歯周病やむし歯が原因で抜歯などをうけると、その危険性が高まる可能性があります。
BP剤服用中は日頃から口腔のセルフケアを心がけ、歯科医院にて定期的にプロフェッショナルケアをふくむ
健診をうけてください。
抗がん剤やステロイド剤を使用している患者様にもBP剤は使用されます。
代表的なBP剤の名称を列記しておきます。
経口剤:
アレンドロン酸、フォサマック、ボナロン、タイドロネル、ボノテオ、リカルボン
アクトネル、ベネット、リセドロン酸
注射剤:
ボンビバ、ボナロン、ティロック、ゾメタ、アレディア、パミドロン酸
注射剤(BP剤ではありませんがBP剤同様注意が必要です):
ランマーク、プラリア
骨粗しょう症の治療薬のなかには、新しい骨を作る細胞を活性化させて
骨の強さを高める新しいタイプの薬が登場してきています。
フォルテオ、テリポンにはBP剤のような副作用は認められません。
骨粗しょう症では骨のカルシウム量も低下します。
カルシウムが不足すると歯周病や歯の喪失にも影響します。
女性のカルシウム不足は歯周病のリスクが増加するという報告もあります。
歯周病の予防にはプラークコントロールが大切ですが、
食生活や栄養面から歯周病の予防に取り組むことも大切です。
診察、検査の結果、ドライマウス(口腔乾燥症)と診断されたら、
日常生活で次のようなことに気を付け、心がけましょう。
ドライマウスの原因がはっきりしていると、対処のしかたが少し異なる場合がございます。
■薬剤性のドライマウスの場合
いつも飲んでいるお薬を確認します。お薬の副作用でドライマウスを生じるものには降圧剤、
利尿剤、抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、抗不安剤、鎮痛剤などがあります。
これらのお薬には体内の水分を減少させたり、神経とその受容体に作用して唾液の分泌を
下げる副作用がございます。薬剤性のドライマウスでは、唾液腺の働きは保持されています。
できることならお薬をへらす、やめるなど主治医の先生と相談することを奨めます。
■シェーグレン症候群のドライマウスの場合
関節の痛み、唾液腺の腫れ、耳下腺の痛み、顎関節の痛み、目の乾燥などを確認します。
シェーグレン症候群は非常に高い確率でリウマチ、全身性エリテマトーデスなどの膠原病を併発します。
血液検査でRA因子,抗CCP抗体、抗核抗体のSS-A・SS-B抗体などが陽性となり、診断ができます。
口腔乾燥にはエポザック、サリグレン、漢方薬など唾液の分泌を促すお薬がございます。
■神経性のドライマウスの場合
強いストレス、精神的ダメージがあるときは心療内科への紹介も考えられます。
交流分析エゴグラム、行動療法を中心に治療し、リラックスのため自律訓練を行うことを奨めます。
唾液腺の働きは保持されているのでストレスが除去できてリラックスできれば
ドライマウスから回復が期待できます。
■糖尿病からのドライマウス
糖尿病の治療を行い、高血糖を改善することをすすめます。
■老人性のドライマウスの場合
口の周りを含め、口腔粘膜の乾燥には洗口液保湿ジェルで粘膜の保護をします。
唾液腺マッサージが有効です。
■放射線性のドライマウスの場合
がん治療などでドライマウスが起きているときには十分な保湿をおこないます。
■脳血管障害性のドライマウスについて
摂食、嚥下状態を確認し口腔ケアを行ないます。
球状のスポンジ、ブラシなどで舌を含めて口腔粘膜、頬粘膜のマッサージを行い、保湿につとめます。
嗽薬によく使用されるポピドンヨード(イソジン)嗽液にはアルコールが含まれていますので、
口腔乾燥を誘発するおそれがございます。水歯磨き、マウスウオッシュ等のなかには
アルコール含有のものがあり、ドライマウスには使用時に注意を要します。
ドライマウスに対しての一般的治療は保湿を中心とした局所対症療法が主体です。
東京歯科大学千葉病院臨床検査部では口腔乾燥感を訴えたり、シェーグレン症候群の疑いとされた
患者様でも唾液腺房の減少はあるものの、完全に消失している患者様はすくなかったと報告しています。
唾液腺マッサージなどで唾液腺を刺激することにより唾液の分泌の促進が期待できます。
糖尿病はインスリンという血糖を下げるホルモンが不足したり、
うまく働かなくなることで血糖値が高い状態になってしまう病気です。
症状は主に代謝異常にもとずく、多尿、口渇、やせ、易疲労感などの症状と合併症による症状があります。
糖尿病では歯周病を合併する率が高いことは,以前から言われてきました。
これに加え最近では、歯周病が糖尿病に悪影響を及ぼすことも報告され話題を集めています。
歯周病は今日では、網膜症、腎障害、神経障害、末梢血管障害、
大血管障害に続く「糖尿病の第6番目の合併症」といわれています。
では糖尿病に歯周病がこれほど多く合併することをどう説明すればよいでしょうか。
そのひとつのキーワードは「高血糖」であると思われます。
血液中に唐が過剰に存在すると、糖化されたたんぱく質はマクロファージを刺激して、
炎症性に毒素を多く産生させます。おそらくこの炎症性毒素が歯周組織を傷つけ、
歯周組織の欠損を生むことになると推測されます。
歯周病の治療によって歯ぐきの炎症が改善すると、
インスリンが働きやすくなり血糖値が改善する可能性があるという報告があります。
歯周病を治療する事で糖尿病の悪化を防ぎ、糖尿病の家族歴のある人は
歯周病を予防することで糖尿病を発症することを防ぐことができるのです。
唾液は健康な人で成人で一日1500ccも分泌されます。
つば(唾液)は汗と共に汚い存在のように扱われることもしばしばですが
非常に大切な数々の役割を担っています。
唾液には消化液としての働きや口腔環境を整え、維持する働きなどがあります。
食物と混ざり合い、デンプンを糖(マルトース)まで分解し、内臓の消化機能を助けます。
食物と混ざり合い咀嚼や飲み込み(嚥下)を助けます。
会話時の発音や、談話をスムーズにします。
5つの味質(甘味、塩味、辛味、酸味、うま味)を溶かし味覚を促進させます。
口の中の食べかすなどの汚れを洗い流し、食物に含まれる酸を中和して、むし歯や歯周病を予防します。
バリアをつくり口からの細菌の侵入に対してリゾチーム、
ぺルオキシターゼ、分泌型免疫抗体などで抵抗します。
このように大切な唾液を分泌するのが唾液腺で、
耳の下辺りにある耳下腺、下顎の下にある顎下腺、舌の下にある舌下腺の3つがあります(3大唾液腺) 。
年を重ねてまいりますと、唾液腺からの唾液の分泌が低下し、免疫機能が落ち、
風邪も引きやすくなり肺炎を併発する可能性も出てきます。
ドライマウスを発症したり、むし歯、歯周病、口臭の原因になることもしばしばです。
入れ歯の痛みなどにも関係して参ります。
唾液の分泌を促進させるには、唾液腺のマッサージが有効です。
唾液腺のマッサージは口腔機能の向上にも役立っています。
唾液を充分に分泌させていつまでも若さを保ちたいものです。
耳下腺のマッサージ 両手で頬を包むようにあて 後ろから山形にマッサージする |
顎下腺のマッサージ 親指で下顎の内側を耳の下から 前へ順番に押す |
舌下腺のマッサージ 両手の親指で下顎の 真ん中内側を下から押す |
ドライマウス(口腔乾燥症)の原因・疾患には
1.一過性のもの
糖尿病,熱射病などの脱水 ウイルス感染(ムンプスなど)
精神的緊張・興奮、薬剤性(抗ヒスタミン剤)など
2.持続的なもの
シェーグレン症候群、サルコイドーシス、C型肝炎、
うつ病、薬剤性(抗うつ剤、降圧剤) 糖尿病、脳血管障害、放射線治療後などがあります。
シェーグレン症候群は1933年にスウェーデンの眼科医のヘンリック=シェーグレンが
乾燥性角結膜炎に関する報告を行ったことに由来しています。
シェーグレン症候群は涙腺、唾液腺をはじめとする全身の外分泌腺に慢性炎症を生ずる疾患です。
唾液腺がおかされることにより唾液の分泌が減少しドライマウスを引き起こします。
乾燥症状の自覚の仕方は個人差があり、訴え方も人それぞれです。
唾液腺の障害程度と自覚的な乾燥症状は必ずしも一致しません。
口の乾燥症状は口が渇くという事だけではなく
口が渋い、口が痛い、唾液が出ない、味がわからない、夜中に起きて水を飲む、
唇が荒れる、舌が乾燥する、舌がもつれる、長くしゃべれない、パンやクラッカーが食べられない、
声がかすれる、空咳が出やすいなどがあります。
ドライマウス以外に注意しなければならない口腔関連症状には唾液腺の腫れがあります。
症状はムンプス(おたふく風邪)に良く似ていますが、両側性に出ることはありません。
特に耳下腺が腫れると口を開けるときや咀嚼時に痛みがあり、顎関節症の症状にも似ています。
乾燥症状がおよぼす健康への悪影響には
睡眠障害(夜中に目が覚め口渇を自覚するため水を飲み、結果頻尿となる)
むし歯の多発、食欲の低下、体重の減少、口唇の炎症、
会話の障害、全身倦怠感などがあります。
発症年齢は中高年の女性に好発すると考えられてきましたが
最近では若い女性や小児にも報告例が増加して来ました。
ドライマウスに対しての治療は局所対症療法が主体であり、
唾液の分泌を高めるために唾液腺のマッサージ、含嗽、
キシリトールのガム、飴、人工唾液を使用して症状の緩和を試みます。
オーラルバランスやバイオティーンは最近ではリウマチ、ガンの術後、
介護の現場でも使用されています。
オーラルジェルとバイオティーン
ドライマウスの原因はひとつではありません。
ましてやドライマウス=シェーグレン症候群ではありません。
しかしシェーグレン症候群はリウマチに代表される膠原病のひとつであり、
リウマチ、全身性エリテマトーデスなどに高い確率で併発します。
ブラキシズムとは何らかの理由で咀嚼筋が緊張して、
物を咀嚼したり飲み込んだり発音するなどの
機能的なことで歯が接触するのではなく、非機能的に上下の歯を
つよい力で連続的に無意識に歯を接触させる悪習癖のことです。
ブラキシズムは睡眠中の歯ぎしりだけではなく、
目が覚めているときにも生じます。
ブラキシズムは大きく3種類に分けられます。
1.グラインディング
食べ物のない状態で上下の歯をすり合わせます。睡眠中におおく、
いわゆる「歯ぎしり」とよばれるのはこの状態です。きりきりという音がして、歯を強く減らします(咬耗)。
2.クレンチング
歯を動かすことなく、上下の歯を強くかみしめる習癖で
いわゆる「くいしばり」と呼ばれる状態です。昼夜を問わず行なわれます。
3.タッピング
上下の歯を早くカチカチと繰り返しかみあわせる習癖です。
一般的に考えても、食事中咀嚼したり飲み込んだりして上下の歯が接触している時間は短いと思われます。
食事をしていないとき、安静が保たれている時は上下の歯は2ミリほど離れていて接触しておりません。
クレンチングのような強く持続的な咬合力が歯に加わると、歯周組織、顔面の周囲の筋肉、顎関節に
咬合性外傷を引き起こしやすくなり、睡眠障害、疲労性頭痛などさまざまな悪影響が全身に及んできます。
歯周病にブラキシズムが加わりますと歯周病が重症化することがしばしばみられます。
歯自体には異常な咬耗や破折が起き、咀嚼筋の異常な緊張により頭痛、肩こり、
顎関節には疼痛、機能障害などの顎関節症が起こります。
ブラキシズムが主な原因で歯周病、歯根の縦破折で歯を喪失するとその後の欠損の治療が
非常にむずかしいものとなります。
ブラキシズムの原因はまだはっきりとしていませんが、かみ合わせに早期接触など多少の問題があり、
そこに大きな精神的ストレス、心理的因子が加わると発生するようです。
ブラキシズムを治療するには早期接触部位が明白であれば咬合調整等を行い、
歯ぎしりには寝る時にスプリントを装着するスプリント療法を適用します。
局所の原因の除去が大切ですが、精神的ストレスの緩和がより重要です。
常滑市久野歯科医院ではストレスの緩和に自律訓練を指導しています。
自律訓練を習得すれば場所を選ばず、いつでもリラックスすることができます。
ストレス時代といわれる今日、環境の急速な変化に対応し、
種々の問題の処理に追いまくられている現代人は、
えてして過度の緊張状態に陥りやすいものです。
さらに、人間関係をうまく保つために必要な欲求の抑制や抑圧が
それに拍車をかけます。
これらの緊張が、歯ぎしりやかみしめ(ブラキシズムといいます)、
上下歯列接触癖(TCH)、顎関節症、肩こりなどの顎・顔面の
症状となって現れることがあります。
自律訓練法とはドイツの精神医学者シュルツ教授によって作られた、
緊張緩和のための心理・生理的治療法です。
この訓練法は、催眠のエッセンスを抽出し、
それを科学的に再構成して練習を段階的に組み立て、
誰でも迷うことなくはじめられるようにしたものです。
しかも、臨床的・経験的なものから生み出されているので、
実際にすぐ役立ちます。
外部からの刺激が少なくくつろぎやすい環境ならばどこでもかまいません。
姿勢には3種類ありますが今回は椅子にすわる姿勢とします。
椅子に深く座り、手は膝の上に軽く乗せます。
ひざは90度に曲げ足の裏全体が地に付くようにすわります。
背筋は軽く伸ばし椅子の背もたれは利用しません。
慣れてくれば、仕事の合間や電車のなかでもできるようになります。
ベルト、腕時計など体を圧迫するものはあらかじめ緩めておきます。
空腹時を避け訓練の前にトイレに行っておくようにします。
つぎに鼻から大きく息を吸って、口から長く細くゆっくり吐きましょう(深呼吸)10回ほど行います。
自分がくつろいでいる、リラックスしているところを思い浮かべます
(例えばソファに寝そべって天井をボーと見ているところとかお風呂に入ってゆっくりと
湯船に使っているところなど)
これで準備は終わりです。
■安静練習 背景公式言語ー「気持ちが落ち着いている」
準備が整い姿勢ができたら、いよいよ「公式言語」を心の中で繰り返します。
この背景公式は自律訓練の全段階の基本とも言うべき重要なものです。
公式を繰り返すとき早く気持ちを落ち着かせようとしてむきになってがんばる必要はありません。
自分がリラックスしているイメージを思い浮かべながら10回ほど繰り返してください。
■四肢重感練習 第一公式言語ー「両腕両足が重たい」
まず、利き腕の練習からはじめます。
「右(左)腕が重たい」という公式を頭の中でゆっくりと何度も繰り返しながら、
ぼんやりとした注意を右手の指先から右腕の方の付け根まで、右手右腕全体に向けます。
その際重たいという言葉を繰り返す間に、「気持ちが落ち着いている」を挿入します。
「気持ちが落ち着いている…右腕が重たい…右腕が重たい…
気持ちが落ち着いている…右腕が重たい…重たい(繰り返し)」です。
重たい感じとは各個人で違いますが例えば腕が布団に沈んでいくような感じであるとか、
腕を上に上げるのが億劫な感じとかでいいかと思います。
その後順次、右腕→右腕+左腕→両腕+両足へと、重感練習を行う範囲を広げていきます。
重たい感じが出なくとも1週間は続けてください。
あせって「どうして重くならないんだ!?」とか思わずに続けてください。
■四肢温感練習 第二公式言語―「両腕両足が温かい」
重感練習が終わったら(2週間ほど重感練習をしても重たい感じが出ない場合でもよい)
温感練習に入ります。
「気持ちが落ち着いている…体がくつろいで気持ちが落ち着いている…
両腕両足が重たい…右腕(利き腕)が重たい…右腕が重たくて、温かい…(繰り返し)」という風に、
利き腕の温感が出てきたらさらに左腕両足へと練習を重ねていきます。
補助イメージとしてはストーブの前で温まっていたり日向ぼっこしているところなどを
思い浮かべるとよいでしょう。風呂上りに練習すると効果的です。
重感練習が十分できていれば、温感は自然に出てくるはずです。
■心臓調整練習 第三公式言語―「心臓が静かに打っている」
リラックスして心臓が静かに打っているのをイメージできれば、結構です。
不整脈、狭心症などの人はこの練習はとばします。
■呼吸調整練習 第四公式言語―「らくに呼吸している」
呼吸器疾患、気管支喘息、過喚起症候群などのかかっている人はこの練習を避けます。
■腹部温感練習 第五公式言語―「おなかが温かい」
胃腸疾患、糖尿病の人は医師の指導が必要です。
■額部涼感練習 第六公式言語―「額が気持ちよく涼しい」
偏頭痛やてんかん、頭部外傷後遺症で脳波に異常がある人はこの練習を避けます。
温感練習までを十分に習得すればその時点で呼吸以下のものについては習得がすぐにできると思います。
額部涼感練習は一般に難しいようですが額に意識をもっていくことは比較的簡単にできるように思います。
ブラキシズム・TCH等で自己暗示を行うときは
温感練習までを十分行ってから特殊練習にはいると良いと思います。
■特殊練習(自立性修正法)
温感練習までできたら特定の症状や苦痛の改善を図るために
その人に特定の公式言語を作って練習に加えます。
自己暗示(特定公式)に使用する言葉の中に否定語を使用しないように努めます。
よい例「唇は閉じて歯は離す」(押見先生)
よくない例「歯をかみ締めない」
☆練習の長期継続
標準練習をすべて習得するには早い人で2ヶ月遅い人では半年くらいかかります。
どれだけ長く続けられるかが大切です。
☆練習回数と時間
一日に3回以上練習します。
☆一回の練習時間
3〜5分にとどめ、徐々に長くしていきます。自律訓練法の練習はマラソンのようなものだといわれます。
最初からスピードを出しすぎると長丁場に耐え切れず、途中でダウンしてしまいます。
一日の練習回数を増やすことより、続けて行う心構えが大切です。
一回の練習が終わったら必ず消去動作を行います。
自律訓練は催眠と深いかかわりを持っていますので練習中は意識水準や筋肉の緊張度がずっと低下しています。
そこでこの動作を行うことで平常の状態を取り戻します。
具体的には、まず両手で握りこぶしを作ってそれを開く。
また握って開くという動作を5、6回左右の手で繰り返します。
次に腕の屈伸運動を5、6回やり、その後背骨を大きくそらして背のびします。
高齢者の死因に肺炎の発症が多くあります。
特に脳梗塞のある人は、唾液が気管に入り込む誤嚥が一般の人より高い割合で起こります。
東北大老人科の研究グループが、脳梗塞の患者の誤嚥を調べたところ、
両側に脳梗塞のある人は92%、片側の人は66%に夜間に唾液が気管に入り込む誤嚥が認められました。
また他の研究グループが特別養護老人ホームに入所している痴呆や、寝たきり、
全身麻痺の要介護高齢者の口腔の細菌を調べたところ、カンジダ(カビ)や通常はいない
腸内細菌等が検出されました。
抵抗力が弱っている高齢者の肺に、不潔なままの口の中の唾液が誤って肺に入れば、
誤嚥性の肺炎を起こしやすいことは予測できます。
高齢者の口腔を清潔に入れ歯等の掃除に心がけてあげる口腔ケアは重要なことと思います。
低体重児が生まれてくる理由には高血圧、喫煙、飲酒、ダイエット、年齢、産科器官の感染などがあります。
歯周病も低体重児の早産に大きく影響を与えています。
そのリスクは他の低体重児出産の理由よりも高く、歯周病に罹患していない人に比べて
歯周病に罹患している人は7〜8倍にのぼるといわれています。
歯周病の原因である歯周病菌がプラークをつくって体との免疫反応の結果、
サイトカインが作られ、サイトカインが血液の流れによって子宮に運ばれて
子宮を刺激することにより早期の出産を促してしまうと考えられています。
妊娠中はつわりで食事を摂るのが不規則になりがちで、ブラッシングも十分できない時期もあり
女性ホルモンの影響で歯周病菌が増殖しやすく、妊娠性歯肉炎にかかりやすくなります。
このように歯周病の炎症が血液の流れに乗って全身にさまざまな影響を及ぼします。
お母さんが歯周病を治療してお口の健康管理を行い、
適正なブラッシングを行い歯周病を予防することで健康な赤ちゃんが生まれてきます。
歯周病は本人だけの問題でなく、次世代にも悪影響をもたらします。
お母さんの責任は重大です。
歯周病の人はそうでない人に比べて、心筋梗塞などの心臓血管疾患になりやすい。
最近、このような驚くべき研究結果が報告され、大きな話題となっています。
その後否定的な報告もありますが、影響のあることは確実であると思っています。
研究報告によると歯周病による炎症は心臓の血管にも影響を与えて、そこで動脈硬化を進め、
心臓血管疾患の発症する危険を高めるといいます。
歯周炎は適切なオーラルケアにより比較的簡単に治療、予防ができる疾患です。
だから歯周病が心臓血管疾患の危険因子(リスクファクター)であることが事実なら、
オーラルケアは心臓血管疾患の発症と進行を押さえる上でとても大切なことになります。
半年に一度の定期検診、メインテナンスは本来早期発見・早期治療のためではなく
歯周病の発症、悪化を未然に防ぐことと現在の口の中の健康を維持するためのものであることをご理解ください。
これまで、人々が歯周病にかかると、歯を失う原因になり、物を良くかめなくなるといった、
口の中の問題としてだけ取り扱われてきました。
しかし、いまでは歯周病の問題にとどまらず、実は全身にもさまざまな影響を及ぼして
例えば妊婦では低体重児早産の原因になったり、心臓血管疾患や糖尿病などがある場合は
それを悪化させるなどの事実が次々とわかってきています。
口の中の健康はオーラルケアによって比較的かんたんに保つことができます。
歯周病が全身疾患を悪化させるといっても、歯周病の治療はむずかしくはなく
多くの歯周病は、患者さんのセルフケアによっても十分に治療することが可能です。
つまり口の中の健康に気をつけるという小さな努力で、もしかしたら致命的になるかもしれない
全身疾患の発症、進展をおさえるという大きなメリットを得ることができます。
歯周病の予防には、日ごろのセルフケアとともに半年に一度の定期検診時に行う
PMTC(プロフェショナルメカニカルツースクリーニング)が大切です。
半年に一度の定期検診、メインテナンスは本来早期発見・早期治療のためではなく歯周病の発症、悪化を
未然に防ぐことと現在の口の中の健康を維持するためのものであることをご理解ください。
日本では年間約5万人が胃癌でなくなります。愛知県ガンセンターの実験では
ヘリコバクター・ピロリという細菌が胃癌と関係が深いことが明らかになりました。
日本では、40歳以上の人の6、7割がこのピロリ菌に感染しているとされています。
しかも、40歳を過ぎるころから歯周病に悩まされる人が増えてきます。
このピロリ菌は、歯周病病原菌に捕獲されて口の中で生きています。
現在、胃潰瘍の治療には、制酸剤に抗生物質を加えて投与するピロリ菌の除菌療法がなされています。
しかし、この療法でも口の中に潜むピロリ菌は除去できません。
歯周病が悪化すれば口の中の生き残ったピロリ菌が胃に入り込んでいくことは容易に想像できます。
胃癌の予防には、緑黄色野菜を多くとり、塩分摂取を控えることが重要ですが、
同時にピロリ菌の温床となっている歯周病の予防・治療も胃癌予防のために大切と考えます。