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[記事のリライト日]2024.09.20
膠原病と歯科の関係について
膠原病とは
膠原病という名前は1942年にクレンペラーと言う病理学者によって付けられました。
人間の体の中の細胞を支えている膠原線維というところに、フィブリノイド変性と言う同じ病変が、見られるいくつかの病気があることに気付きました。
現在では組織学的な変更やさらに詳しく病変が解明されてきて、膠原病と言う名称が適切なのか疑問も出ています。
代表的な膠原病にはリウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、混合性結合組織病、サルコイドージスなど多くの疾患があげられます。
最近のテレビドラマの主人公の女性の内科医の罹っている多発性筋炎・皮膚筋炎も膠原病(自己免疫疾患)の一つで難病に指定されています。
膠原病に含まれる病気にはいくつかの共通性が見られます
・症状として発熱、関節痛、筋肉痛、こわばりなどが炎症によって生じます。
骨、関節、筋肉の痛みとこわばりがある場合には膠原病はリウマチ性疾患としてあつかわれます。
・病理組織学的に結合組織という組織に病変が起こります。
結合組織に病変が見られる病気は膠原病以外にも多くあり、膠原病は結合組織疾患として扱われます。
・免疫機能に異常が見られます。
免疫とは通常、身体の外から侵入してくる細菌やウイルス・異物に対してこれらを排除するための体の防御機構です。
膠原病では排除する必要のない自分自身の体の成分を異物と勘違いして免疫反応を起こしてしまいます。
体の中で自己による抗原抗体反応が起こり、身体を攻撃,障害を引き起こします。自己免疫が関係する病気は自己免疫疾患といいます。
膠原病は自己免疫疾患として扱われます。
体の成分に対して免疫反応が起こるのでアレルギー疾患ともよばれることもあります。
膠原病はリウマチ性疾患であり、結合組織疾患、自己免疫疾患、自己アレルギー疾患とも呼ばれます。
以前に久野歯科医院コラムでも紹介しているように特に、リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群は歯周病などの歯科に関係することが多くあります。
リウマチについて
リウマチは主に全身の関節に痛みを伴い、慢性の炎症をもたらす病気で、進行すると関節の破壊が起こり正常に行われる機能が失われてしまいます。
悪性関節リウマチは難病に指定されています。
リウマチの診断や治療には非常に進歩が見られます。
リウマチの診断項目には多くのものがありますが、最近ではリウマチ因子(Rf)ばかりでなく抗ccp抗体、mmp-3などの血液による多くの検査項目が加えられリウマチの診断をより迅速に確実なものにしています。
抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)はリウマチに特異な自己抗体で、リウマチの早期診断、発症の予測、早期治療に非常に有効な検査項目となっています。
MMP-3は関節破壊の進行の程度を知る指標として大切な検査項目です。
現在のリウマチのアンカードラッグであるメソトレキセート(リウマトレックス、メトレート)や生物学製剤の効果で数値は低下します。
以前に「おばあちゃんが膝が痛く血液検査でリウマチだといわれたが、整形外科で張り薬をもらって治った。リウマチはなおるし、たいしたことない」とお話しされていた方がいらっしゃいましたが、それは大きな間違いです。
血液検査のリウマチ因子は高齢者で陽性になる頻度が高く、それのみでリウマチであると判断できません。
そのおばあちゃんは軽度の膝関節症であったであろうと思われます。
残念ながらリウマチが完治することはまだ難しい状況です。
しかし、治る可能性が決してないわけではありません
抗がん剤としても使用されるメソトレキセート(リウマトレックス、メトレート)という葉酸拮抗剤が有効で、さらに生物学製剤の出現により大きく治療が進歩し関節の変形を軽減させ関節の痛みをとり、日常生活を普通に送れるようになってきています。
生物学製剤もいまではエンブレル、レミケード、オレンシア、ヒュミラなど種類が多くなり、新型コロナウイルス感染症でサイトカインストームが発生した場合に使用されるアクテムラは本来リウマチの治療薬として開発されたものです。
リウマチは全身の関節を冒しますが椎骨や歯科に関係する顎関節も冒されます。顎関節では開口障害、顎関節痛、顎関節炎の症状が認められます(リウマチ性顎関節症)
全身性エリテマトーデスについて
全身性エリテマトーデスは顔面に蝶形の紅斑ができたりする皮膚症状、腎臓をはじめとする多くの内臓にに障害をおこしたりするのが特徴です。
関節にも炎症、痛みが多く出ます
全身性エリテマトーデスは難病に指定されています
全身性エリテマトーデスについても治療に進歩がみられます
膠原病は「不治の病」といわれ、歯科では30年ほど前では全身性エリテマトーデスは治療にステロイドが使用されているため大学病院での歯科治療が行われるように厄介なものでした。
最近では重症度にもよりますが十分にコントロールされていれば安心して歯科治療ができます。歯科治療もなるべく患者様にストレスを与えないように努めています
治療には主に副腎皮質ステロイドが使用されます。
その他には免疫抑制剤が使用されます。
シェーグレン症候群について
シェーグレン症候群も膠原病のひとつです。
シェーグレン症候群も難病に指定されています。
主な主症状は、外分泌器官が侵され、障害を起こします。
涙がでにくくなったり、唾液の分泌の減少、唾液腺が腫れるなどの症状があり、食道粘膜、胃粘膜、気管粘膜、鼻腔粘膜など分泌物の出る器官には影響を及ぼし、障害が起こります。
シェーグレン症候群での唾液腺の腫れのなかでも耳下腺の腫れはおたふくかぜ(流行性耳下腺炎)との鑑別も必要になります。耳下腺の腫れにより開口障害、嚥下痛、顎関節炎を併発することもあります。
シェーグレン症候群のドライマウス・口腔乾燥症はむし歯の多発、歯周病の悪化など歯科にはとても関係の深い疾患です。
ほかの膠原病と同様に関節痛、炎症がありますが、本態性のシェーグレン症候群の場合にはリウマチのような関節の変形はないとされています。
しかしシェーグレン症候群は50%以上の確率でリウマチ、全身性エリテマトーデスなどの膠原病を伴っている症候性のシェーグレン症候群が含まれています。
ドライマウス・口腔乾燥症の方は眼科で涙液の分泌試験(シルマーテスト)や炎症の有無を調べたり、膠原病内科で抗核抗体などの詳細な血液検査を行い、悪性リンパ腫などの大きな疾患が隠れているか調べることも必要です。
血液検査では抗核抗体のうちのSS-A抗体、SS-B抗体が陽性になるのが特徴的で大きな診断の材料となります。
唾液腺の造影、唾液腺シンチグラム、MRIなどを行うこともあります。
治療は主に乾燥状態にある器官に対しての対症療法となります。
完治は難しいと思われます。
常日頃の唾液腺のマッサージが有効です。
唾液の出やすくなる口腔乾燥改善薬のピロカルピン塩酸塩(サラジェン)という飲み薬があります。
発汗、頭痛、吐き気など副作用があるときは水に溶かして、うがいをするように使用する場合もあります。
膠原病は病態はもともとは同じもので、症状の出ている、障害を起こしているリウマチや全身性エリテマトーデス、強皮症などは氷山の一角の部位に過ぎないといわれています。
膠原病の多くはシェーグレン症候群を伴います
口腔内の乾燥のため口内炎がよくできるようになります。
副腎皮質ステロイドの副作用と歯科治療
ほとんどの膠原病の治療には副腎皮質ステロイドが使用されます。
抜歯のようなストレスを伴うような歯科診療を行うためには患者様の状態にもよりますが、場合によってはステロイドの追加を主治医の先生にお願いしなければなりません。
全身性エリテマトーデスでステロイドを大量に使用しての治療では血栓症の予防に血液をサラサラにする薬が処方されることもあります。
ステロイドを使用している患者様は骨がもろくなる傾向があります。
リウマチの治療薬メソトレキセート、生物学的製剤も骨を脆くします。
その対応として骨粗鬆症の治療薬が処方されます。
骨粗鬆症の治療薬のなかには、その副作用として顎骨壊死があり、顎骨壊死の予防には口腔内を清潔に保つことが必要です。
このように膠原病と歯科疾患や歯科治療には今まで以上に密接な関係が成り立つようになり、さらなる配慮が必要になってきています。