常滑市で開院113年の歴史のある歯医者 久野歯科医院です
皆様に役に立つ歯科の情報をわかりやすくお知らせします
新型コロナウイルスの影響で対面でのセミナー・講演会や講習会はZoomなどで行なわれるようになっていましたが、新型コロナウイルス感染症が収束傾向にあったため、対面での開催が増えてきました。
今回は、延期されていた研修会への参加の報告をいたします。
今後はまたZoomなどに戻ってしまうのか不安定な状態です
名古屋顎矯正研究会
東京から講師としてお招きしているK先生、三重県からのH先生、豊橋のN先生など皆元気な様子で安心しました。
近況報告が行なわれた後、早速たまっていた症例の発表がおこなわれました。
T4Kトレーナーの導入について
会員の歯科医師はT4Kについて導入の難しさ、患者様の受け入れる状態、指導の仕方などについて報告がありました。
私見ですがT4Kマイオブレイスは魔法の装置ではないこと、夜の就寝時の装着がひとつのステップとなること。
保護者様に導入時に十分話すようにしています。
決して簡単にできるものではないと思っています。
そういう意味でもアクティビティといわれるものがとても重要になってくるのでしょう。
当院では患者様の中には異物感が少ないなどの予想に反してBWSを嫌う方もいらっしゃいました。
またマイオブレイスには非常に多くの種類がありますが、導入にはT4Kトレーナーでスタートすれば良いと思います。
必要があればマイオブレイスに変更すればよいのですがT4Kトレーナーで十分対応できると思います
難しい開咬の治療
私は開咬と舌癖について質問し会員の意見を聞きました。
一般的に成人の開咬は程度にもよりますが、むずかしく、リラップスがおきやすいといわれています。
上下の歯と歯がかみあっている顎関節の位置と顎関節の安定している位置が異なっている場合には上下的な開咬に水平的な開咬が加わり、さらに治療の難易度が上がります。
最近ではインプラントアンカーの使用により大臼歯の後方への移動や圧下が確実にできるように言われていますが、たとえ治療が順調にすすみ開咬が改善しても、舌癖が残っているとリラップスがおきやすくなります。舌癖を失くすことが必要で大切です。
K先生のレクチャーと会の今後
K先生のレクチャーでは長期観察例から後戻り(リラップス)への対応や成長に伴う小児からの機能を読むことの大切さと難しさについて顔貌の変化の写真を示され、説明をうけました。
小児の頃から成人になるまでの顔貌の変化、歯列の変化、咬み合わせの変化など正貌・側貌の写真、口腔内写真、頭部X線規格写真(セファロ)のトレースを重ね合わせて解説いただきました。
30年ほどつづいてきたこの勉強会(研究会)も新型コロナウイルス感染症や各メンバーの変わってきた家庭の状況、後継者などの事柄のため新しい形を模索して行く時期がきているようです。
東京歯科大学愛知県同窓会総会の記念講演
昨年に続き対面で同窓会の総会を行なうことができました。
新型コロナ感染症が流行する以前は大学の同窓会愛知県支部の総会が終わると一年の区切りを感ずることが多かったのですが、懇親会の無い、この2年の間にはそれを感ずることが少なかったように思います。
記念講演 東京歯科大学歯周病講座 主任教授 斉藤淳先生
同窓会での歯周病についての講演は3年ほど前の愛知学院大学の三谷先生の学術講演会についでの講演です
講演では歯周組織の再生療法のひとつのリグロスについて解説いただきました
リグロスとはbFGFというたんぱく質を利用した再生療法で歯科領域で日本で作られた薬剤です。
歯周外科時に適用でき、他の再生療法のエムドゲインとは異なり社会保険の1部負担金で保険治療が可能です。
講演の最初では最新の再生療法に眼に行きがちであるが、基本治療がいかに大切かをとても丁寧に詳しく教えていただきました。
再生療法の前に
再生療法の項目の前に
・歯周病のリスクファクターのなかでの環境要因について
・レッドコンプレックス以外の多種多様な細菌も歯周病に強く関与している
・遊離細菌による感染の増悪
・マイクロバイオフィルムでは細菌の構成が重要になってくる
・デンタルクラーク(歯垢)はバイオフィルムで強固に付着して薬物の耐性能力を上昇させているため、器械的な除去が予防、治療の主体となる
・病的なセメント質は表面に沈着しているがどこまでなのか判別がしにくい
スケーリングやルートプレーニングで重要なことは
・ストロークに意味を持たせる
・探知のテクニックがスケーリング、ルートプレーニングには不可欠
・トレーニングの必要性
・超音波デブライドメントについて
・細菌だけが問題ではない、宿主と細菌のバランスが崩れると歯周病が発現する
・今後は宿主に働きかける治療法も確立してくるだろう
などを説明していただきました
再生療法について
・再生療法は歯周治療の予後を変える可能性が期待できる
・エムドゲインについては20年の使用経過により非常に有効な材料であることがわかっている。
・リグロスは日本で開発された歯周病の再生療法に使用される薬剤で主成分はトラフェルミンで、医科ではすでに床ずれとか皮膚潰瘍にフィブラストスプレーとして使用されている
・リグロスの局所の副作用として腫れがあるが、治療の経過で起こるものでほとんど問題はない
・骨欠損の状態では他の療法と同じように3壁性骨欠損のものではリグロス単独で、1壁性、2壁性の骨欠損では骨補填財の併用で効果があがる
など多くの臨床治療例を提示してリグロスによる再生療法が有用であることをわかりやすく解説いただきました
基本治療が確実に行なえていて、プラークコントロールができていなければ、何をしても効果は上がらず無駄であること、治療を行なうものの技量が必要なことは他の再生療法と同じです。
さらに動物を用いた基礎研究についても非常に多くの大学院生をふくむ研究室員の紹介を交えての研究報告をいただきました。
大学の臨床講座では臨床、教育、とともに研究は大きな柱のひとつです。
基礎的研究の裏づけがしっかりしていなければその講座が成り立ちません。
懇親会のない講演会
新型コロナウイルス感染症は今までの研修のあり方や人との交流の仕方を大きく変えました。
これは歯医者ばかりでなく、多くの学生や一般の方の仕事の場面ではさらにこの変化が大きいことでしょう。
懇親会が割愛されることで講演会では聞けない詳細な質問や講師の先生のお人柄に接する場面が少なくなるのはとても残念でなりません。