常滑で115年の歴史のある歯医者 久野歯科医院です
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令和4年度東京歯科大学愛知県同窓会の学術講演会
今年は東京歯科大学の学生2名も参加がありました
演題名:口から食べるを守りたい
講師:藤田医科大学歯科口腔外科学講座教授 吉田光吉先生
吉田先生は病院や地域での連携のなかで「口から食べることの専門家」として積極的に活動していらっしゃる先生です
高齢化が速いスピードですすむ中で患者の健康問題に対応するためには現在、チ-ム医療は極めて当たり前のものになってきています
講演会では
・チームのあり方として各ステージごとで他業種連携の形態が3つに分けられる
・急性期では医療者の個個の役割りが決まっていて、医療者間の機能的な連絡が少ない形態である
・亜急性期では医療者の役割りが決まっているが医療車間の機能的連絡が叱りと存在する形態である
・回復期、維持期では患者の必要性が存在し、医療者で流動的に担当する形態となる
ことの説明から始まり、
急性期
急性期では
・歯科における病診連携機能をになうために口腔外科が設置されていて、周術期の口腔機能管理への対応が必須となっている
・摂食嚥下リハビリテーションや栄養管理は各ステージで参画が求められている
・現状では周術期の口腔機能管理が衛生士任せになっているところもあり、歯科治療の介入が十分ではなく義歯がないまま食べている者も見受けられる
とお話いただき、
病院内での医科・歯科連携ができていて周術期の管理が行なわれていると
口腔ケアで術後感染がすくなくなり、口腔ケアで肺炎が減ったという報告や
海外から人工呼吸器挿管関連肺炎も口腔ケアを行なうと減少するという報告から
周術期口腔機能管理は病院内での完結をめざしたほうが良いと思われることをお話され、
病院内での周術期の口腔管理の重要さ、大切さを解説していただきました
回復期
回復期では一般的に入院している患者の口腔内環境はよくないが、
・一定の入院期間があり、歯科治療による口腔機能回復に向けて集中的な治療が行ないやすい
・2ヶ月から3ヶ月の入院期間があるのでその期間に入れ歯を装着、使用してもらいその後退院し、地域のかかりつけの歯科医院で口腔管理が理想であろう。
しかし中小の病院が多く、そこに歯科医師が配置させにくい現状もある
・摂食嚥下リハ、栄養改善に歯科が果たす役割は大きく、生活習慣の再獲得のためには口腔衛生指導が重要となる
・急性期から回復期に口腔内への介入することが大切で、それ以後の患者のデンタルIQの改善に期待ができるが、この連携が悪いと口腔内環境は改善されない
・口から食べるには義歯を装着することも重要であるが、義歯を入れたら使えるわけではなく、調整はもちろん、訓練が必要である
などをお話いただきました
また講演のなかで示された要介護高齢者の義歯治療の適応の診断のフローチャートは私たち、個人の歯科診療所の歯医者にも今後の訪問歯科診療の判断としておおいに役に立つもの思われます
維持期・生活期
維持期・生活期では
被介護者・患者や介護者・家族との入れ歯に対する考え方のズレが生じやすく在宅診療での問診の大切さを解説していただきました
問診においては
・キーパーソンの存在・・・キーパーソン(娘、ケアマネージャーなど)がいないと正確な情報がえられない
・かかりつけ医師・・・かかりつけ医がいて服薬が守られていていれば、おおむね全身状態は安定している
・今日の状態、覚醒の程度や食欲の有無・・・急性症状はぼっとしていたり、元気がなく食欲がないことからはじまる
・低体重は抵抗力の低下を招き、何をどのくらい食べているかが重要で立ち上がりのできる人は元気である
など、歯科在宅診療の参考になるキーポイントを教えていただきました
抵抗力の低下を招く低体重について何をどのくらい食べているかが重要で、刻み食等では見た目は同じでも量の減少により栄養が低下してしまうから、できれば普通食が食べられるようになるためにも入れ歯の必要性が高まるとのことでした
さらに舌圧と日常生活自立度、食事形態、栄養状態などの関係性についても解説いただきました
舌圧と舌運動
舌の運動を評価するには舌圧を診ることが大切であり、
舌運動を補うための義歯について義歯が具備すべき用件は上顎は決して落ちないこと、下顎は安定していればよく、そのためには精密印象は必ず必要であるとのことでした
高齢者の入れ歯では特に舌尖が十分に固定ができることが必要でS状隆起の付与や口蓋の厚みをふやし舌の運動不全を補う舌接触補助床を作成することも有効であるとご説明いただきました
吉田先生はご講演の中で
口から食べるを守るには病院や地域での多職種の連携が必要でとても大切であること
口から食べるを守るには口が動く、舌が動くことが重要であること
を繰り返し熱くお話くださいました
私たち歯科医師は誤嚥性肺炎や栄養障害に深く関わっているにも関わらず肺炎や低栄養に対してリスク管理ができない、今後、私たち歯科医がチームを主導してリスク管理ができるようになることで、口から食べれなくなる悪循環を断ち切ることができる
とお話くださいました。
私たち、開業歯科医にとっても訪問歯科診療を行なうにあたり参考になることの多い、内容の非常に濃い、吉田先生の熱い気持ちが伝わる素晴らしい講演会でした
講演会後
出席してもらった学生はこの講演を聞いてどう感じ、受け止めてくれたのでしょうか
私が学生の頃40年ほど前では考えられないほどの患者さんの長寿、高齢化がすすみ、歯科医療へのニーズが大きく変化してチ-ム医療の一員としての歯科医が新たに必要となってきました。
基本的な技術を習得した上で、他の医療に携わる業種の方との連携ができ、活躍できる場所が多方面に広がることは歯科医師にとってやりがいもあり、よいことだと思います。
久野歯科医院 院長
久野昌士