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常滑の矯正歯科 久野歯科医院 ≫ スタッフBlog
常滑市の久野歯科医院スタッフブログです。
定期的に当院からの新たなお知らせや矯正歯科治療の特徴、症例等について更新しております。是非ご覧下さい!
歯ならび、不正咬合で、お悩みの方へ
常滑市の歯科、矯正歯科の久野歯科医院です。
了解をいただきました主に常滑市のご在住の患者様の
矯正歯科の治療経過を通して処置方針、治療期間、治療費用などをお知らせいたします。
どのように治療が進んでいくのか治療経過の写真を提示して説明してまいります。
上顎の治療を先行させています。
前回の矯正歯科治療の報告時に比べて、0.14ニッケルチタンラウンドワイヤーの
歪みが解消されつつありレベリングが順調に進んでいます。
右上の側切歯の捻転をより確実に治療するためには
しっかりとブラケットとワイヤーを結紮しなければならず、
前回のプラスティックブラケットからメタルブラケットに一時的に変更しています。
右上の側切歯の部位は反対咬合の状態にもなっています。
下顎の第一大臼歯にバンドを装着し少しずつ下顎の治療の準備も行っていきます。
次回は常滑市大野町在住のMA様の治療経過(上顎犬歯埋伏歯の開窓・牽引症例)を報告する予定です。
愛知県保険医協会の歯科学術研究会に参加の報告をいたします。
演題:予防歯科からみた歯周病
講師:大阪大学大学院歯学研究課長・歯学部長の天野敦雄先生
会場は前回参加した愛知学院大学歯学部の
松本先生の講演会と同様に会場一杯の会員であふれていました。
天野先生は大阪大学の歯学部の教授だからというわけでは
ないでしょうが、とてもお話が巧みでイントネーションが
関西弁で楽しく講演会を受けることができました。
天野先生は歯周病での臨床、研究はもとより、テレビなどのメディアにも
しばしば登場され教育の面においても学生の面倒見もよく信任の熱い素晴らしい先生のようでした。
講演の導入部では21世紀の歯学は今までの
「削る・つめる・抜く」といったマイナスの医療から
「取り戻す・再生医療や防ぎ守る・予防医療」のプラスの医療に変わりつつあること。
なかでも再生医療は期待の星である。
かかりつけ歯科医が健康をささえている。
かかりつけの歯科医は健康寿命に大きくかかわっていて
高齢者(老人)の栄養失調が問題となっているが、
肉類、乳製品を口から食べることこそが
問題を解決する大きな要因である。
というお話から始まり、
アメリカと日本、どっちが歯を大事にしているかということを
ハリウッドのスターのニコラスケイジ、トムクルーズ、
ジョージクルーニーの過去と現在の微笑を話題にして、
歯の病気への対処法は
アメリカでは予防であり、日本では治療に重点がおかれている。
歯の健康にお金をかけている度合いはアメリカでは87%、日本では43%。
歯への年間投資額はアメリカは3万6千円、日本では6千円。
自分の歯に自信のある人はアメリカでは85%、日本では29%で、
結論として
日本は歯に対する意識がアメリカより低いことをお話いただきました。
このことは一般歯科の事だけではなく、
矯正歯科にも言えることです。
アメリカ人は矯正歯科治療を行っていることを決して隠そうとはしていません。
むしろ誇らしげにメタルブレースを他の人にみせて矯正歯科治療していることを
外の人に向けてアピールしているかのように見えます。
ティーンの間ではワイヤーをブラケットにとめるゴムを
カラフルにしておしゃれとして楽しんでいます。
一方日本人は矯正歯科治療を気づかれたくなく
控えめに口元を隠して笑い、
前へ出て積極的に自分の意見を話そうとしない
人が多く見受けられます。
話のなかで提示されたアメリカの前大統領、現大統領の
白く美しい歯の笑顔と
現在の日本の総理大臣の笑顔の対比が印象的でした。
本題に入り歯周病の原因についてお話がありました。
当コラムでもお知らせしているように歯周病は
歯周病菌による感染症で人類にとって最大の感染症です。
平成23年の調査では
国民の77%が歯周病になっており
そのうちの38%に治療が必要で、
そのなかの10%が深刻な歯周病にかかっていて
4人に1人は歯周病で歯を失くしていると報告があり、
平成28年の調査ではさらに歯周病が増加しています。
歯周病は
● 唾液を介した経口感染で密度と頻度が感染の度合いを左右します。
● 親しいお友達から感染します。
● 食べ物から(大皿料理や鍋物の直箸)感染します。
● ペットの犬から感染します。
当コラムでお伝えしているように歯周病菌のなかで特に悪さを働くのは
グラム陰性細菌のポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)、
タントネレラ・フォーサイセンシス(Tf菌)、
トレポネーマ・デンティコーラ(Td菌)の3種です。
この3種の歯周病菌を「レッドコンプレックス」と呼び
細菌検査でレッドコンプレックスが検出されれば注意が必要です。
レッドコンプレックスを頂点とした歯周病菌のピラミッドは小学生から中学生へ、
中学生から18歳以降へとこつこつ積み上げられて完成していきます。
このようにして口腔細菌叢は10代に完成します。
お口の中にいる細菌の種類は500〜700種類といわれていますが
このすべてが1人のお口の中にいるわけではなく
健康な細菌叢では30種類以上、
不健康な細菌叢では300種類以上いて
歯周病の治療前と後でも口腔内細菌の菌叢のプロファイルは変化しません。
菌の量が歯周病の治療により減少するようです。
歯周病の発症の原因は歯垢(プラーク)と歯周組織の均衡が崩壊することによっておこります。
お口のセルフケア、プロフェッショナルケアが不足してプラークコントロールが不良となり
歯垢が多く古くなっていくと細菌と細菌の間で代謝物質の相互扶助が起こり、
時間とともに歯周病菌の病原性が高まっていきます。
抗菌薬の効果を減弱させるバイオフィルムが形成され、
栄養共生によってバイオフィルムが高病原化され炎症を引き起こします。
レッドコンプレックスのなかでも
特に病原性の高い歯周病菌がポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)で
成人の65%のお口になかに存在していておおよそ18歳以降に感染します。
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)は子供にはいません。
鉄は歯周病菌の必須の栄養素で
レッドコンプレックスの歯周病菌は鉄がないと増殖ができず、
増殖ができないので高い病原性も獲得できません。
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)は赤血球ヘモグロビンのヘミン鉄が大好物です。
年齢の若い頃歯周組織と均衡を保っていたバイオフィルムは
プラークが蓄積し、歯周組織の抵抗性の低下が起こります。
そこに喫煙、栄養状態などの生活習慣やストレスが加わります。
健康な歯肉溝の上皮バリアが決壊し、ポケット内潰瘍面が形成されます。
潰瘍面から出血が起こり歯周病菌に鉄分や栄養分が供給され
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)の増殖が起こります。
その結果病原性の強いバイオフィルムが形成され
バイオフィルムと歯周組織のバランスが崩れ歯周組織の破壊が進んでいきます。
続いて歯周病の治療についての講演に移りました。
いままでの講演で歯周病の原因が病原性の高い歯周病菌のレッドコンプレックスの
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)であることを踏まえて、
歯周病の治療の目的は高病原性のバイオフィルムを除去して
歯周ポケットの潰瘍面からの出血を止めて、潰瘍面を閉鎖し潰瘍面を修復することである。
潰瘍面が修復され、出血が抑えられれば、レッドコンプレックスの歯周病菌の大好物である
赤血球ヘモグロビン鉄が減少して歯周病菌の増殖を抑えることができること。
現代の科学では歯周病菌の完全な除去は不可能で歯周病菌は
バイオフィルムの中と細胞や組織の中で生き続けること。
歯周病に完治のないことをお話していただきました。
歯周病治療のKey Point は
歯周ポケット内の潰瘍面を閉じて
レッドコンプレックスの歯周病菌の量を減らすことにあるのですが、
今回の講演会での3つ目の項目として予測歯科の解説をしていただきました。
バイオフィルムの病原性を見分けるには歯周病細菌検査が必要で有効です。
口腔細菌叢のプロファイルは簡単には変わりません。
そのため歯周病細菌検査は短い期間に何度も行う必要はありません。
フィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)線毛の遺伝子型には
Ⅰ型、Ⅰb型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型の6種類があり
その中で最も病原性の高いのがⅡ型でスーパーハイリスクのタイプです。
Ⅱ型は歯周病患者の60%に存在し、
歯周ポケットの深さが4ミリでは50%近く存在し
歯周ポケットが深くなるにつれ検出率が増加して
8ミリ以上の歯周ポケットでは90%以上検出されています。
歯周病細菌検査が行われフィロモナス・ジンジバリス(Pg菌)の線毛遺伝子型が判定できれば、
そのリスクに応じて歯周病の発症を防ぐことができるとお話いただきました。
早く、歯周病細菌検査が歯周病の保険治療に適用されることが望まれます。
天野先生は
「歯周病の患者様は床屋で散髪する感覚で定期的に歯科医院を訪れ、
プロフェッショナルケアを行うことでプラーク細菌叢を
健康状態に維持して細菌叢の変化を防いでほしい」
とお話されていました。
日本は歯への年間の投資額は6千円です。
私は床屋さんに3〜4ヶ月に一度行きます。
床屋さんの1回の散髪代は4千円です。
天野先生のお話では
歯周病に関係する全身疾患は106あるといわれているそうです。
床屋や美容院に行くように歯科医院でお口のプロフェッショナルケアを受け、
歯周病を予防することで命にかかわる心血管疾患、脳梗塞、心内膜炎などや
合併症のこわい糖尿病などの慢性疾患、認知症などを予防することができると思っています。
続いて質疑応答では歯周病細菌検査はインプラントの施術をされる患者様、
インプラント治療を完了してメインテナンスに移行している患者様に応用することで
将来のインプラント周囲炎の予測にも有効である。
最近、保険適応となった再生療法に使用される「リグロス」の
使用時の基本治療の重要性について。
糖尿病の食事療法と歯周病の食事療法、歯周病治療に効果のある食品について。
スクリーニングとしての歯周病細菌検査「バナぺリオ」について。
などにお答えいただきました。
講演会の後には公演内容や講師の人柄などにもよりますが色々な思いが交錯します。
今回の天野敦雄先生の講演会はとても楽しく爽やかな気持ちで会場を後にすることができました。
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